池澤夏樹、「日本文学全集」と『古事記』を語る/代官山蔦屋書店3周年記念「WE RESPECT...」

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代官山 蔦屋書店のオープン3周年を記念して、11月から12月にかけて、連続トークイベントが開催された。

12月9日には、作家の池澤夏樹さんが登場。現在、河出書房新社130周年記念の「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」(全30巻)編集に携わり、11月に刊行された第1巻『古事記』では、新訳にも取り組んだ。

池澤さんの本とのかかわりや、いまなぜ文学全集なのかなど、話頭はあちらこちらへと伸び、会場には豊かな言葉の世界が立ち現われた。

インタビュアーは代官山 蔦屋書店ブックコンシェルジュの間室道子氏。

池澤夏樹氏と本の思い出

―すでに河出書房新社から、個人編集の「世界文学全集」を出されています。それに続くかたちで「日本文学全集」を個人で手がけることになった池澤さんの、本との関わりから話をスタートさせましょうか。小さいころはどんなお子さんでしたか。最初の「本の記憶」は?

「おしゃべりでしたね。寝ているとき以外はずっと話しているようなこともあるくらいに。家は貧しくて、大人はみな必死に働いていたから、子どもは勝手に遊んでいなさいといった感じ。読み聞かせをしてもらったりすることもなかった。

小学生のとき、『世界少年少女文学全集32巻』が家に届くようになった。定期購読というやつですね。実はだいぶ経って知ったのですが、これは母と離婚した福永武彦が、とつぜん父性に目覚めて申し込んでくれたものだった(笑)。僕が、実の父親が作家の福永武彦だと知ったのは高校時代になってからなんです。子供の頃は、ぜんぜんそんなこと知らなくて・・・。大きな贈りものでしたね。最初は積み木みたいに積んで遊んでたんですが(笑)、徐々に進んで読み始めるようになって、これはすごいと心打たれたのは、スティーブンソンの『宝島』でした」


今、文学全集を個人編集するということの意味、伝えたいこと

―大きな文学全集を、ふたつも個人編集することになった経緯をお聞かせください。

「版元の河出書房新社は、かつて文学全集で大きく当てました。いまの時代にふさわしい文学全集を、またつくりましょうとお誘いいただいたのが直接のきっかけです。ただ、最初は、無理じゃないかと思いました。本はすっかり消費財となっていて、ひたすら娯楽のためのものが求められています。教養主義的なもの、読み進むために読者の力が必要とされるものは受けないんじゃないかと。

そうは言いながら、『やるならどんなかたちがあり得るだろう』と、ついリストを書き出してしまいました(笑)。いまの世界を文学で読み解くとしたらどうなるか、それくらい勝手な方針を立てて構成するなら、新しく文学全集を立ち上げる意味もあるかなと思うようになって、『世界文学全集』が生まれました。

版元としては、次は『日本文学全集』を、ということになりますね。打診をされましたが、これも当初はお断りしていました。その編集をするには、僕は日本文学に対する知識が足りないと思ったから。けれど、2011年の震災を機に、自分の関心が日本へ向かっていったのも事実。我々とは何なのか。そんな問いが浮かんで、ならば日本文学によってそこを考えようと、編集を引き受けることにしました。

僕としては、いろんな作品をとにかく読んでほしい。だから古典は現代語訳で掲載することにしました。現代の作家たちに訳してもらおうと依頼をしていくと、みなさんよく手を挙げてくれました。僕自身は編集の立場に徹するつもりだったのですが、請われて何か訳もすることに。

そこで、自分が最も好きで、感覚的にも合う『古事記』を扱うことにしました。これは日本で最初の文学作品。書く側も勝手がわからず、混乱もあります。その味をどれだけ残して、かつ読みやすくするか苦心しました。スピード感のある話の展開も、なんとか現代語訳で表現したかったところですね」


「太安万侣はきっと完成後、大勢の前でできたての『古事記』を朗読したにちがいない」と想像する池澤さん。日本のみならず海外でも、文学イベントでは朗読を盛り込むが、この夜もコンシェルジュのリクエストに応えて、何か所か『古事記』を朗読。

ひとりでも多くの人に、豊穣な日本文学に触れてほしい、味わってほしい。そんな一心で文学全集づくりに取り組む池澤夏樹さんの、真摯な姿勢が話しぶりから強く伝わってくる時間となった。

(文:山内宏泰)

池澤夏樹(いけざわ・なつき)

1945年生まれ。作家・詩人。
88年『スティル・ライフ』で芥川賞、九三年『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2010年「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」で毎日文化出版賞、11年朝日賞受賞、ほか多数受賞。他に『カデナ』『アトミック・ボックス』など。

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アーティスト情報

池澤夏樹

生年月日1945年7月7日(72歳)
星座かに座
出生地北海道帯広市

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