穂積和夫氏が語る、アイビーとイラストレーション/代官山蔦屋書店3周年企画「WE RESPECT...」

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代官山 蔦屋書店のオープン3周年特別企画「WE RESPECT...」。代官山 蔦屋書店がリスペクトするクリエイター11名にそのクリエイティブの源を探る本企画。12月5日に登場したのは、イラストレーター・穂積和夫氏だ。

1950年代末から1960年代にかけて、一世を風靡したファッションスタイル・アイビー。ブレザーにボタンダウンシャツ、ネクタイ、チノパンやウールのパンツ、ローファー…1950年代にアメリカの東海岸の大学生 “アイビーリーガーズ”から生まれたインテリジェンスな雰囲気の漂うファッションは、日本でも多くの若者を虜にした。穂積氏もそのひとりであり、彼の描く“アイビー・ボーイ”はアイビーファッションを象徴するアイコンとなったと言っても過言ではない。この日は、穂積氏のキャリアを振り返る貴重な夜となった。ゲストは同世代の服飾評論家・伊藤紫朗氏、進行役は服飾評論家・林信朗氏。


石津謙介氏との出会いと、イラストレーターとしてのキャリアのスタート

日本におけるアイビースタイルを語る上で欠かせないのが、VAN創業者であるファッションデザイナー・石津謙介氏。穂積氏のイラストレーターとしてのキャリアをスタートさせるきっかけとなった人物も石津氏だという。

「長沢節先生の画塾(セツ・モード・セミナー)に通っていたんです。そうしたら、婦人服のイラストレーションを描きたいという人がいっぱいいるわけです。その中で当たりを出すにはどうしたらいいかと考えて、婦人服じゃないものを狙おうと。当時は『男子専科』という雑誌が発売された頃だったのですが、その頃は生意気だったので、『あまりうまい人がいないなと。これくらいだったら僕も描けるんじゃないかな』と思いまして(笑)」

林 そこで石津先生と出会ったわけですね

「そうです。友達に石津先生の妹さんと仲の良い人がいて、その方を介して石津先生のところへ売り込みに行って。その翌日、婦人画報社の『男の服飾』編集部から口絵を頼みたいと連絡があったんです」

雑誌『MEN’S CLUB』と穂積和夫

穂積氏の仕事を語る上で欠かせないのが、雑誌『MEN’S CLUB』での作品群だろう。1963年の創刊から1~2年後にはイラストを寄稿していたという穂積氏の仕事を、代官山 蔦屋書店の『MEN’S CLUB』のヴィンテージ本とともに振り返る。

『MEN'SCLUB』

林 1964年、1965年くらいの号を見ると、穂積さんはほとんど描いていらっしゃいますね

「目次から編集後記までほぼ全部描いていましたね。毎号毎号描いているので、『先月と描いたのが同じだな』思うときは、こちらが少し変えたりしました。例えば、コールテンとかコットンとか全部“C”のつく服で揃えたり、ページ毎にマンガ風にしたりリアルにしたり。そういう工夫をしないと毎月同じになってしまうから、描いているほうも面白くないと読むほうも面白くないだろうと思って」

伊藤 穂積先生の作品で驚くのは、いろいろなタッチがあることです

「そういうのは“器用”といって、絵描き仲間では褒められないんですよね。要するに、器用にいろいろ描くけれども、本質的なものは果たして、みたいなことを言われたりするんですよ(笑)」

“アイビー・ボーイ”の誕生

代官山蔦屋書店で開催中の『KAZUO HOZUMI WORKS : 1957 to the present』。2014年12月28日(日)まで

穂積氏の代表作と言えば、“アイビー・ボーイ”。その誕生にも“同じだとおもしろくない”精神があるという。

「僕の師匠である長沢節先生や中原淳一先生、宮内裕先生、原雅男先生の4人が、当時を代表するスタイル画、今でいうファッションイラストレーターだったんですね。次の世代を押し出すためにその4人が会員となって、ファッション画の公募展を開催したんです。僕がその次の会員になり、公募展にも出展することになりました。その際、いつも同じような、誰もが描くようなファッションイラストレーションじゃつまらないので、全然違う発想で描こうと。例えば、日本の凧やめんこの絵、木版調も入ったようなものを描いたものを出品したんです。それが“アイビー・ボーイ”のはじまりです。展覧会が終わって、額縁に入ったものを家に持って帰ってもしょうがないから、そのままVANの社長室へ持ち込んで。石津先生に『そのあたりにかけておいてください。進呈します』と。翌日、石津先生から電話がかかってきまして。『あれ、そのままポスターにするから。原稿料っていうのも何だから、倉庫に行って好きな服を持って行ってくれる?』と(笑)。それで、ブレザーを1枚貰ったんですけどね(笑)。それが1962〜1963年くらいですね」

林 『MEN’S CLUB』よりもっと前に生まれていたわけですね。

「そうですね。ただ、10年くらいかけて、プロポーションや顔立ちをだんだんリファインして、現在のアイビー・ボーイが完成したわけです」


穂積和夫は“イラストのデパート”!?

“アイビー・ボーイ”やスタイル画だけでなく、車など実に幅広いテイストのイラストを描く穂積氏のイラストについて、話は進んでいく。

写実的なクルマのイラストも穂積氏の代表作のひとつ

等身の高いイラストを描いたこともある

「僕は『目指せ、イラストのデパート』というキャッチフレーズですから(笑)。大学で建築を勉強していたのに辞めてしまったから落伍者という意識があったので。“アイビー・ボーイ”も最初に描いたものを今見ると『下手だな』と思いますね」

林 苦手なイラストとかはあるんですか?

「食べ物の絵が難しいですね。なぜかというと食べ物はおいしそうに見えないといけないんですよね。そのおいしそうに見えるというのが難しい。質感を出すのが難しいんですよね。あと、花はあまりうまくない。師匠には『草花の種袋のような絵は描くな』と、師匠の師匠には『花を描かせたら女性にはかなわないよ』と言われたりもしました。僕が花を描くと造花みたいにみえてしまうんですよね。水を吸い上げる生花というのは女性のほうが上手いですよね」

伊藤 男性の服を女性のデザイナーが作るとすぐにわかるのと同じですね。

「そうですね。その逆もありますよね」

林 『MEN’S CLUB』時代に参考にしたイラストレーターは?

「いろいろな人に影響を受けていますね。フランスのルネ・グリュオー(Rene Gruau)とか、ノーマン・ロックウェルやバーニー・フュークスなどのマガジンイラストレーターにも影響を受けました」

伊藤 穂積先生は万能選手だと思っています。文章も書かれますし、イラストもいろいろなタッチで描かれて、そういう方は世界にもあまりいらっしゃらないと思います。そして、ものすごく物知りですから。だから本当にいつでも関心しています。年はかわりませんが、大先輩だと思っています。

穂積和夫の“これから”

2015年で85歳を迎える穂積氏。スピードを落とすことなく第一線で活躍し続ける穂積氏の今後について聞いた。

林 これからは、挑戦したいことはありますか?

「1年かけて『絵本アイビー図鑑』を描いて疲れてしまったので、来年は何もしないで遊んで暮らしたいなと(笑)。できれば、仕事場をきれいに片付けて、小さなスペースで好きな絵をいたずら描きしていけたら楽しいだろうなと思います。絵が器用というのはあまり褒められたことではないみたいなので、これからはできれば不器用な絵を描きたいと思っています」


日本のメンズファッション史に欠かせない穂積氏ら三氏の話からは、クリエイティヴの本質とファッションの真髄が垣間見えた。後世に語られるべき日本のメンズファッション草創期の時代の匂いを感じることのできた夜となった。

(文:岡崎咲子)

◆コラム「穂積和夫氏のいま読みたい本、気になる本とは?」

アイビー、イラストについてのトークの最後に設けられた質問タイム。そこで出た観客からの質問に対する穂積氏のアンサーとは?

フランスの巨匠、アンリ・トロワイヤが出版界を描く三部構成の物語。「ある時期、海外のミステリーを読んでいたんですが、登場人物の名前が覚えきれなくて面倒臭くなって(笑)。その後、藤沢周平に惹かれて全部読みました。これはなんとなくおもしろそうなので、読みたいと思っています」

穂積和夫(ほづみ・かずお)

1930東京生まれ。東北大学工学部建築学科卒業後、建築設計事務所勤務のかたわら長沢節氏に師事して絵を学ぶ。メンズファッションのイラストレーションを中心に、クルマ、日本の古建築、ファッション評論など、守備範囲は広い。 著書に『着るか着られるか』(三一新書)、『絵本アイビーボーイ図鑑』『絵本アイビーギャル図鑑』(講談社)、『大人の男こそオシャレが似合う』(草思社)、『絵本アイビー図鑑』(万来舎)、訳書に『男の着こなし』チャールズ・ヒックス著(草思社)など多数。

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