インタビュー連載「Provoke 挑発する人たち」第1回 最果タヒ/詩人・小説家

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ジャンルの壁なんて、もはや関係ないのだ。 やすやすと越境しながら、自分のつくりたいものを思いのままにつくり、これまでの「枠組み」を刺激する表現者が、続々と登場しつつある。

そんな彼ら彼女たちの軽やかな足取りを、感じ取ってみよう。


愛してと、お前じゃないよを繰り返して、きみはどんなきれいな女性になっていくんだろうか。

細い糸をたどれば愛がみつかる予感、いつのまにか気のせいだと気づいたのに、

指をきりながらいまも、糸をたぐっているね。

(「さよなら、若い人。」 『死んでしまう系のぼくらに』所収)

誰もが身近に感じられる詩が本とウェブ上で広まり続ける

めったに起こらないことが、現代詩の世界で進行している。

1万部超の売れ行きを示す詩集が登場して、いまなお勢いが衰えないのだ。

現代詩というジャンルは、ポップスや映画のようにメジャーな存在とはいえない。現存する詩の書き手をだれかに問うたって、たいていは「谷川俊太郎」くらいしか名は挙がらないのでは?

詩を取り巻くそんな状況を変えつつある存在。それが、新刊『死んでしまう系の僕らに』で人気を博す最果タヒだ。3冊目の詩集となる今作が、9月に発売されて以来、版を重ねている。

「中学生のころにブログを始めて、文章を書き続けていたら、あるとき『これは詩として発表できるのでは?』と人に言われた。そうかと思って、詩ですといって出してみたら、受け入れてくれる人たちがいた。その後に詩の雑誌への投稿を勧められたりもして、いろんな媒体に載せていただけるようにもなって、それでようやく『わたしは詩を書いているんだ』と意識するようになっていきましたね」

と本人が言うように、もともと現代詩をやろうという意識はなかったがゆえ、彼女の作品は読者を限定することがない。そこが幅広く読者を獲得している所以のひとつか。

「書き始める前にたくさん詩を読んでいたわけでもないので、詩というジャンルの枠がどこからどのあたりまであるものなのか、いまだによくわかっていないんですよね」

詩の雑誌への投稿、『グッドモーニング』(思潮社)、『空が分裂する』(講談社)といった詩集の刊行などとともに、インターネット上での詩の公開も続けている。さいしょはブログで、その後は自身のツイッターも用いるようになった。

ウェブ上ではさらに、シューティンゲームのフォーマットを利用して詩の言葉を撃ち落とすブラウザゲーム「詩ューティング」や、Webカメラで映し出した人の顔の目・鼻・口から詩が飛び出すアプリ「わた詩」も公開。受け取る側に知識や気構えがまったくなくても、詩を楽しめるようなしくみを続々とつくり上げてきた。それも読者層を広げている要因になっている。

「楽しんでくれる人がいるからやっているだけですけどね。『詩が身近になった』と言っていただけることもあるので、そういうときはやっぱりうれしい。ウェブ上で発信していると、言葉の世界とは別のところで仕事をしている人たち、たとえばデザイン関係の方々なんかも注目してくれたりして新鮮です。詩というトラディショナルなものが、ウェブという前衛的なものとけっこうマッチするというのが、デザインの人にはおもしろかったりするのかもしれません」

詩というジャンルの範疇など気にせず、軽々と垣根を飛び越える姿勢が、詩の楽しさを多方面へ伝えることにつながっている。

さよなら、若い人。 きみは飛び降り自殺ができない。

美しい肌がよれていくこと、

目がしぼんで小さな穴になること、

魂がせめて美しい星になればと、願うような、

そんなかわいいおばあさん、

こんにちは。

一緒に、私とお茶しましょう。

(「さよなら、若い人。」 『死んでしまう系のぼくらに』所収)

エンターテインメント要素を取り入れた小説作品も続々と

詩の内容自体も、きわめて共感を呼びやすいかたちになっている。「恋」や「孤独」、「死」など、だれもが気にかけたことのある内容を、難しいことばを使うことなく表していく。とりわけ若い世代には、すっとことばが内側にすべり込んでくる。

「わたしの詩にはあまり具体的なことが書かれていないし、自分の感情をそのまま書いているわけでもありません。身の回りのことを書いたり、感情を吐露したりといったものとはちがう。だから、あいまいな部分が多くて、いってみればブレまくっているんですよね。そのブレている波長のなかから、読者の方が自分にちょうどぴったりくるところをうまく掬い上げて、読んでくれているんじゃないかとおもいます。それで多くの人にフィットしたりするのかなと想像しています」

いろいろな表現、とくに詩においては、書き手が〝思いのたけ〟をぶつけるのがふつうなのではないかと考えてしまうけれど、最果タヒの詩はそのようにはできていない。

「そういう詩もかっこいいとおもうんですけど、自分にはぶつけるべき〝思いのたけ〟がないし、そういうものを書きたいという欲求はないんです。いまのような、あいまいなかたちのまま書いていければいい」

詩を書き継ぐのと併行して、小説作品の発表も続けてきた。

「さいしょのころは、小説を書くという感覚がうまくつかめなくて苦労しました。詩を書くときと同じように語感をとことん気にしたり、すべての文を輝かせなければと気負ったりして、どうしてもすこし息苦しい作品になってしまっていたんですね。きっと自分のなかでは、長編詩を書くような感覚だったんでしょうね。ぜんぶの文章を詩にしようとしていて、それを長くしていけば小説になっていくんじゃないかと考えていた。

でも、それだと読む人が疲れてしまうんですよ。小説の場合はもっとストーリーで引っ張っていって、そのストーリーをわかってもらうためのことばも費やさなくてはいけない。そうしたしくみのことが、最近ようやくわかってきて、長い作品も書けるようになってきましたね」

2014年には、『きみはPOP』(『美術手帖』2014年4月号)、『きみ、孤独は孤独は孤独』(『文藝』冬季号)、『星か獣になる季節』(早稲田文学2014年冬号)と、3作の小説を発表。徐々にエンターテインメントの要素が多く取り入れられるようになり、作品の読みやすさがぐんと増した。それでいて、もちろん要所には詩的で鮮烈なことばもふんだんに散りばめられて、読み応えある贅沢な小説に仕上がっている。

2015年も、詩と小説の両面にわたって創作は展開されていく予定という。日々の創作や活動の状況は、逐次ウェブサイトやツイッターなどで発信されるので、ぜひ継続的にチェックを。

http://tahi.jp/

(文:山内宏泰 撮影:伊澤絵里奈)

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