『マッサン』で注目のスコットランド民謡、息づく歌文化と美しさの秘密

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NHK連続テレビ小説『マッサン』をきっかけに、スコットランド民謡の人気が高まっている。主人公エリーが故郷を思い出し口ずさむ「The Water Is Wide」を原曲とした「広い河の岸辺」は、心が洗われる歌として中高年層を中心に大ヒットしている。そのスコットランドの豊富な歌文化と美しさの秘密の一つは、その歴史的背景にあった。

歌が日常に根付く国、スコットランド

スコットランド伝統のバグパイプ演奏

『マッサン』では、これまでに「Auld Lang Syne」(蛍の光)、「Comin' Thro' the Rye」(故郷の空)、「Home, Sweet Home」(埴生の宿)などが登場した。「蛍の光」はマッサンとエリーが心を交わし日本に旅出すシーンで、「故郷の空」は日本でスコットランド時代の回想シーンなどに、そして「埴生の宿」は教会で寂しさに耐えられず一人オルガンを弾きながら…と、エリーは様々なシーンでスコットランド民謡を口ずさむ。

「スコットランドでは歌うことはごく日常的なことで、今でも老いも若きも、駅や店先や道ばた、至るところでよく歌うようです。その種類は、望郷の歌、失恋の歌、愚痴の歌、労働歌、英雄を讃える歌と、バラエティも豊富です」と話すのは、東京を拠点にスコットランド民謡の語り弾きを行い、ケルト圏各地の民謡収集をする木村林太郎氏だ。

なお、「蛍の光」の原曲「Auld Lang Syne」は、日本では別れの曲として知られるが、『マッサン』でもエリーが再会の歌として口ずさんだように、英語圏では新年の祝いやセレモニーなどで歌われている。

サッカー声援から独立政党支持まで―現代に息づく歌文化

イングランド軍に追われボニー・プリンス・チャーリーが逃亡したスカイ島

17世紀にイングランドによる大虐殺が起きたグレンコー

現在、スコットランドでは、民謡はサッカー観戦や政治活動といったシーンでも歌われるという。その背景には、宗教の派閥争い、そしてイングランドからの抑圧という、不遇の歴史があるという。

「スコットランドではカトリックとプロテスタントという宗教対立の歴史がありますが、現在のサッカー界でも、カトリック系の『セルティックFC』とプロテスタント系の『レンジャーズ』の2大サッカーチームがあります。各宗派に縁深い伝統歌が、今ではそれぞれのサポーターソングとして歌われています」

スコットランドといえば今年9月の独立住民投票も記憶に新しい。独立支持派に好んで歌われるのが、スコットランドの英雄ボニー・プリンス・チャーリーを讃える歌とのこと。

「ボニー・プリンス・チャーリー(チャールズ・エドワード・ステュアート)はイングランドの支配下にあった18世紀スコットランドでイングランドに戦いを挑んだ人物で、スコットランド史上最も人気があります。これまで彼を讃える歌が無数に作られてきました。ただし、歌詞は実際の歴史より美化されたり、尾ひれが付いたりしているものも数多くあるようです」

不遇の中で生まれた哀愁のメロディ

スコットランドには「クラン」と呼ばれる氏族を母体とした意識が強い。イングランド軍に追われた末に移住したスコットランド系移民の間では、クランの歌や出身地の歌も大切にされてきたという。

「スコットランドで歌文化が育まれ、そのメロディが美しいのは、不遇な歴史の中で悲しみや絶望を知る人が、それでもその先に希望や善を見いだせるように作ったからではないでしょうか。現在の日本も、決して希望に満ち溢れた世の中ではありませんが、そんな今だからこそ、シンプルで美しく、優しくて力強いスコットランド民謡に耳を傾けてみてください」

最後に木村氏におすすめしてもらったスコットランド民謡を深める映画と書籍で、その歴史と文化に思いを馳せたい。

スコットランド民謡を深める書籍と映画

スコットランド系移民の歌から辿る、祖国悲しみの記憶

書籍『彼方なる歌に耳を澄ませよ』

(文:アリステア・マクラウド、訳:中野恵津子、新潮社 刊)

スコットランド系カナダ移民の2人の主人公を中心に、故郷の歌から祖先の記憶を辿る物語。

スコットランドの伝説を元にしたアメリカン・ミュージカル

ミュージカル『ブリガドーン』

(主演:ジーン・ケリー 、監督:ビンセント・ミネリ)

スコットランドで語り継がれる、100年にたった一度だけ現れる不思議な村「ブリガドーン」。この村に迷い込み、100年に一度の恋をする男を描いた、1950年アメリカ制作のミュージカル。スコットランド民謡とアメリカのタップダンスが融合。

歌い継ぐケルト、戦の悲しみ

書籍『アネイリンの歌―ケルトの戦の物語』

(文:ローズマリー・サトクリフ、訳:本間裕子、小峰書店 刊)

紀元600年のブリテンを舞台に、吟遊詩人アネイリンの叙情詩の世界を物語る一冊。ケルトの戦の悲しみをその歌詞が表現する。

(文:山岸早瀬)

【取材協力】ケルト民謡語り弾き 木村林太郎氏

1999年より東京を拠点に、ケルティックハープを使ったスコットランドやアイルランドの民謡の語り弾きを行う。2003年よりアコーディオン奏者藤野由佳氏とRivendellというユニットでライブ活動を始め、二枚のアルバムを発表。2008年、アイルランドの国営ラジオ放送局「ラディオ・ナ・ゲルタフタ」出演。2009年にソロアルバム『Minstrel』、2013年にヴァイオリニスト菅野朝子氏とのデュオユニット「ラノッホ」よりアルバム『Song Thrush』発表。

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