木村裕治氏の仕事観と頭の中に迫る!/代官山 蔦屋書店3周年記念「WE RESPECT…」

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代官山 蔦屋書店の3周年記念イベント「WE RESPECT…」。12月7日にはエディトリアルデザイナー・木村裕治氏が登場。木村氏に仕事や暮らし方など様々な角度から聞いたトークイベントには、当時からの仲間やファンなど多くの人々が駆けつけた。

司会は、アジアと日本のアーティスト・マネジメントで活動する亜州中西屋(ASHU)の中西大輔氏。『Esquire』の編集者として木村さんと深く関わった仲間の一人だ。

飛行機の座席に身を埋め、頁をめくると、これから訪れる国ではないもう一つの訪問地、『翼の王国』へ飛んでいくことができる――。全日空の機内誌『翼の王国』を18年間手がけたのをはじめ、世界初の男性誌『Esquire』の日本版を10年間、『ミセス』『暮しの手帖』『和樂』『朝日新聞GLOBE』など、数多くのアートディレクションに携わる木村裕治さん。日本を代表するエディトリアルデザイナーは、たっぷりとした余白が文字や写真を引き立たせ、読む人をその世界に誘ってきた。

そんな木村さんが独立して木村デザイン事務所を構えたのは奇しくも代官山で、1982年のこと。

デザインの答えはひとつじゃない

――僕が木村さんと出会ったのは『Esquire』日本版が創刊された1987年。その頃の木村さんは、まさに代官山に拠点を構えていらっしゃいました。
「当時はもちろん蔦屋書店もなかったし、代官山にはもっと人が住んでいましたよね。でも、その割に生活感があまりなかった。切迫感を持つこともなく、この空気を吸っていられた時代でした」

――当時の木村デザイン事務所には、『Esquire』、『翼の王国』などのいろんな人が集まり、非常に長い時間をかけて編集会議をしていました。

「木村事務所とはいっても、僕は一介のデザイナーです。お茶を出したり、お酒の用意をしたり(笑)。その間に物事が決まっていく感じでした。ただ、今は一つの打ち合わせに3時間とか5時間かけるなんて考えられないとよく言われますけれど、編集者やカメラマン、デザイナーみんなでまだ形になっていないものを転がすわけだし、デザインの答えは1つじゃないから、ボールを蹴っているのと同じで何時間でも遊んでいられたんですよね。そのまんま飲みに行ってもずっと仕事の話をしていて、仕事と遊びの境目なんてなかった。その思いは僕だけじゃなかったと思います」

――時代が変わったということですか?
「時代と言ってしまえば簡単です。ただ、急ぎ足の今から見れば、まだそこらへんでちょっと畑を耕しているぐらいの空気感がありました。もちろん、実際に畑はなかったけれど(笑)」


――『Esquire』はまさにそうでした。『翼の王国』も同じように作っていたのですか?
「『翼の王国』は、雑誌『POPEYE』の編集者だった粕谷誠一郎くんが編集長でした。僕は最初、いわゆるPR誌だろうと勝手に決めつけていた部分がありましたが、粕谷くんが『そういう編集はしない』とキッパリ言っていて。とてもやりやすい雰囲気を作ってくれました」

友だちがいればなんでもできる

――木村さんと言えば、男性誌の『Esquire』の印象が鮮烈ですが、女性誌の『ミセス』『和楽』などでもクオリティの高いものを手がけてこられました。どう切り替えたのですか?
「男も好き女も好き、みたいな(笑)。どっちがいいという話には興味がないんです。雑誌って表向き男性誌として作っていても、女性に買ってもらえなければ商売になりません。これは僕の元ボスである江島の受け売りですけれど、『つまらない仕事はおもしろく、おもしろい仕事はもっとおもしろく』というのが基本。男と女を分けて考えるのは僕の性に合わないので、全部一生懸命やるわけですよ」

――江島さんって、木村さんの元ボスで江島デザイン事務所の江島任さんですね。木村さんは今回のイベントのために、いろんな標語を作られました。その中には「友だちがいればなんでもできる」という感動的なメッセージがあります。男性誌でも女性誌でもやれるというのも、それに通じるということですね。

木村デザイン事務所のメンバー

「代官山に事務所を構えて独立した時、不安がなかったわけではありません。僕は、江島は天才だと思っています。真似することはできないと最初からあきらめていた。その頃、コピーライターの佐伯誠さんと写真家の飯田安国さんに出会いました。この二人の存在はすごく大きく、その分、僕が返せているかほとんど疑問ですが、たとえば安国はお酒飲みたいなと思ったらいつの間にか連れて行ってくれる。そういうことも含めて友だちと出会ったことで、『Esquire』を作っていくことができました」


自分の物差しをさがしながら

――木村さんは子どもの頃、他人と比べられるのが嫌だったとか。デザイナーとしてやっていく中で、どうやって自分の物差しを作っていったのですか?
「偉い・偉くない、金持ち・貧乏、いろんな尺度があると思います。ただ、世間一般に言うそうした良い悪いみたいなものとはちょっと違う、そこにはいたくないなっていう感じはあります。人からもらったよそ行きの考えでは身に付かないというか。かっこ悪い自分を隠すこともなくなって、地をさらけ出すことでちょっと生きやすくなったのかもしれません」

木村コレクションの“カワキモノ”。気になるものがあると、なんでも置いておいて不思議なオブジェに

――木村さんのイマジネーションの素材は独特です。落穂ひろいというか、名付けようもないひからびたものも大切にされています。
「コレクションというほどではありませんが、食べかけのパンを置いておいたらオブジェになってくれたり、サラダに使ったアボガドの皮をもらって置いておくと干からびて何となくかわいくなったり。仕事と遊びに境目がないという話にも絡むのかもしれませんが、そういうどうでもいいものを自分だけの世界に持って楽しむ技術はいつまでも持ち続けていたいと思っています」


「木村とリビングで談笑しているように今日は楽しんでいって」。そんな思いから、イベント当日に集まった人全員にビールやコーヒーを振る舞った木村氏。なぜ読者を魅了する誌面を作り出し続けられるのか。仕事、友だち、暮らしの中のイマジネーションに、その秘密がちりばめられていた。


木村さんを描いた「星の王子様」ならぬ「干しの王子様」の缶バッチ

来場者にビールを振舞ってくれた

木村さんが大好きな「ビスコ」にも遊び心満載。顔に注目!


(文:野間麻衣子)

木村裕治(きむら ゆうじ)

1947年北海道生まれ。日本を代表するエディトリアルデザイナー。
『Esquire』日本版、全日空機内誌『翼の王国』、『ミセス』、『和楽』など縦組の美しい雑誌を数多く手がける。「朝日新聞GLOBE」では縦組の新聞の中に横組の新聞をはさみ込む新しいスタイルのアートディレクションで、2009年度ADC賞受賞。書籍の装丁にもファンが多い。

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