「写真をつくっているのではなくて、写真を使って作品をつくっています」/「Provoke 挑発する人たち」第3回 吉田志穂(写真家)

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ジャンルの壁なんて、もはや関係ない。 やすやすと越境しながら、自分のつくりたいものを思いのままにつくり、これまでの「枠組み」を刺激する表現者が、続々と登場している。彼ら彼女たちを称して「Provoke=挑発する」人と呼びたい。その軽やかな足取りを感じ取ってみよう。

ネット画像も自分で撮った写真も、まったく同じように扱う

写真家への登竜門として知られるコンペティションが、リクルート開催の「写真1_WALL」。2014年秋の第11回展で、作品「log」によってグランプリを獲得した吉田志穂は、当時まだ東京工芸大学4年生だった。

受賞作品は斬新そのものだ。インターネット上に漂う画像から、意に叶うものを見つけ出し、加工を施したうえで大きく出力。その画面を、モノクロフィルム装填のカメラで複写して作品にする。自分が撮った写真をもとにすることもあるが、それらはいったんデータとして取り込んだあと、あえてインターネット画像のように粗く加工して出力。それを複写し作品にしていく。

なんとも複雑な過程を経ることで、画面はインターネット画像の匿名的な雰囲気を帯びたまま、作者の存在もくっきりと有することとなる。だれもがいつも眼にしているような光景でありながら、初めて触れるタイプの画像にもおもえる。

「写真をつくっているのではなくて、写真を使って作品をつくっている。そんな考えのもとにやっていることです」

と、吉田本人がいうように、作品をつくるための道具として、ここでは写真が選択されている。ではなぜ、作品をつくるにあたって、写真を用いることにしたのだろう。写真のどんな特長に惹かれている?

「そうですね、ものを止めて見ることができるから、でしょうか。自分が体感したある瞬間を、あとになってじっくり見られるメディアは、写真しかない。それで使っているんだとおもいます」

現実を忠実に写し取る写真は、読んで字のごとく「真を写す」と信じられてきた。写真が持つそうした機能を、もっと活用しなくていいのだろうか。

「そこはあまり考えていないですね。というより、じつは写真が真実を写すということを、正直なところ信じていない。考え方としては理解できますが、かつてそう信じられた時代があったんだ、というくらいの感じです。

私たちの世代は、小さいときからすでにインターネットがあって、そこに載っていることはべつに正しいものばかりじゃないとよく知っている。そこに画像があったとして、写っていることが無条件に真実だなんて、まったくおもわない」

なるほどたしかに、作品「log」に使われている写真は、画像が荒れていたり、画面内に写り込みがあったりして、そこに含まれる内容を正確に伝えようという意図はあまり感じられない。事実や真実を伝えるためのメディアとして、写真を用いているわけでないのはあきらかだ。

観る側の視線の動きまで計算した展示構成

それにしても、コンペティションで「log」のような作品を堂々と出すのは、勇気のいることでは? 審査員にきちんと理解してもらえる自信はあったのだろうか。

「分かってもらえるはず、とおもっていたわけではないですが、こんなことを考えている人がいるんだなと、すこしでもおもしろがってもらえたらいいなと」

インターネット世代を自認するいっぽうで、作品にはかならずフィジカルな面を取り入れる。

「『log』は、最終的にフィルムで撮影するとのルールを設けています。インターネット上をはじめいろんなところにある画像を使うので、すべての写真をいったん同じ条件にしないと収拾がつかなくなります。それに、プリントというモノにすることで、存在感を感じ取ることができる気がするので。

それから、作品内に写っている場所はすべて、一度は自分が行った場所ばかり。行ったことのない場所の画像を使いたいときは、とにかくいちど行ってみます。行ったところのない場所を使うのは、PC画面をスクリーンショットで撮れば簡単ですけど、それでは説得力が出ない。人に作品を説明するとき、『行ったことはないけれど、なんとなくよかったから』とは言えません。自分が知っている場所を集めることが、作品の質にかかわってくのかはわかりません。ただ、この作品は自分の考察の過程でもあるので、自分にとって納得できるかどうかは、けっこう重要になるんですよね」

「写真1_WALL」では、審査の一環としてギャラリー「ガーディアン・ガーデン」で自作を展示し、その出来が審査の対象となる。吉田の展示は、壁にランダムに並ぶ写真群と、床に直置きで立て掛けられたプリントで構成されていた。観る側が視線を移したり、立つ位置を変えたりするごとに、作品は異なる表情を見せ、よく練られた展示であることはよく伝わる。

「展示は好きなのでこだわりました。一つひとつの写真にギャラリーの光景がどう写り込むかというところまで考えながら、時間をかけてつくりました。あちこちで足を留めてもらいながら観てもらえるようにとおもいながら作業しました。そういうことが見応えにつながるはずだと信じながら」

展示も、作品自体も、完成度はひじょうに高い。まだ短いキャリアであるというのに。

写真をはじめたのは、千葉県の高校生だったときに写真部へ入部したとき。進学を考える際、「まだやりたい」とおもい、東京工芸大学で写真を続けることに。入学当初はオーソドックスなモノクロ写真を制作していたが、「自分よりうまい人はたくさんいる。それに、世の中に撮られていないものはない」と気づき、自分の強みや関心を色濃く反映させられる方法を考え直した。

「じゃあ、インターネットの画像を探してきて、それを写真に撮ってみたらどうだろう。切り口をそこにすれば、おもしろいことできるんじゃないかとおもいました。というのも、自分自身がネット依存・携帯電話依存のところがあるので。小学生のころから、肌身離さず持っているんです。ずっと携帯やスマホを触っている人はSNS依存が多いでしょうけど、わたしの場合はひたすら画像を見ているタイプ。そういう自分の日常やしてきたことを、作品に取り入れたらいいんじゃないかとおもったんです」

数年の試行錯誤の積み重なりのうえに生まれたのが、「log」だった。「写真1_WALL」のグランプリ受賞者には、受賞の約1年後に個展の場が用意される。「log」の延長線上にある作品で会場を埋め尽くそう、驚きのたくさんある空間をつくり上げようと、いまは考えを巡らせているところだ。

(文:山内宏泰 撮影:伊澤絵里奈)

◆吉田志穂が出品するグループ展、開催。

東京工芸大学芸術学部写真学科「Recommend展2015」
2月28日(土)~3月2日(月)
新宿ニコンサロン
http://www.nikon-image.com/activity/salon/

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