代官山 蔦屋書店が選ぶ、おもしろい日本のブックデザイン。表紙がしおりの本から春画のデザイン本まで

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雑誌、アート、デザイン、建築、文芸、絵本などあらゆるジャンルを網羅している代官山 蔦屋書店では、昨年より「代官山BOOK DESIGN展」と銘打ったブックデザインにフォーカスを当てた展示・販売を行っている。そして、今年も第二回目が開催される。

「レイアウト」「装丁」「印刷」「造本」という4つの視点から選ばれた国内外の本からは、ブックデザインという切り口から本の魅力をあぶりだしている。本展を企画するのは、アートコンシェルジュ・番場文章氏と建築・デザインコンシェルジュの三條陽平氏。企画したきっかけは、アート、写真、デザイン、建築をこよなく愛するふたりが、日本のブックデザインを紹介したいという意図があったという。開催の意図、今後の展望などについて話をきいた。

日本のすぐれたブックデザインを紹介したい

番場:「代官山BOOK DESIGN展」では、日本の優れた本をちゃんと紹介したいと思っているんです。オランダやドイツなど、海外では権威あるブックデザイン賞があるんですが、日本ってそういう取り組みが少ない。もう少し人の行き来が多いところで、書店員である自分たちから発信できればと思ったのが、「代官山BOOK DESIGN展」をはじめたきっかけなんです。

三條:毎年、印刷博物館で「世界のブックデザイン展」という、スイス、オランダ、オーストリア、ドイツなどのブックデザイン賞の受賞作を集めた展示を行っていて。海外のブックデザイン賞は、デザイナーにとっても受賞することが名誉となる権威のある賞なので、クオリティもとても高いんです。日本でも海外に負けないくらいすばらしいブックデザインの本があるのに、賞としてはあまり紹介されていない。それであれば、自分たちでやってもいいんじゃないかと思ったんです。

番場:「世界のブックデザイン展」で展示されている日本の作品は、取次経由で書店流通されている本が優先されている印象を受けます。リトルプレスなど流通を通していない本はほとんど入っていないのではないでしょうか。日本もまだまだいい本がたくさんあるのに、ブックアワードにノミネートされないというのは残念ですよね。

三條:そうですね。日本になぜ権威あるブックデザイン賞がないのかは、すごく疑問なんですよね。

番場:海外では、デザイナー、書店員、出版社など、全体で交流があると思うんです。日本は分断されている印象があるから、そういうことも一因としてあるのかなと思いました。

三條:文化の違いもあるかもしれないですよね。海外は本の文化が深くて、学生の卒業制作で、卒業制作とは別に一冊の本を作るくらいだから、本に対する意識が全然違う。

番場:そうですよね。「代官山BOOK DESIGN展」もゆくゆくは、アワードができるところまで大きくなったらいいですよね。

三條:そうですね。ここまで世界中の本を多ジャンルで紹介できるのって代官山 蔦屋書店ならではだと思うんです。デザインに優れた本が売り場に置かれていて、気づく人は気づくと思うんですけど、それに気づかない人ももちろんいる。そういう人にもっと届けていきたいですよね。書店で優れたブックデザインの本をどう際立たせるかといったら、フェアをおこなうか、POPをつけて展開するしかないと思うんです。ブックデザインにもっとスポットを当てて、普通の視点では気づけないようなポイントを伝えていくのは意義のあることだと思うんです。それは、ひとつのライフスタイル提案にも繋がると思っています。

番場:そうですね。展示でもそういう提案をしたいと思っています。

三條:一回目は注目すべき部分をフィーチャーして、アクロバティックな展示をしましたが、今年は展示方法も少し変えたいですよね。

番場:今年は昨年のような要素を入れつつ、本棚的な展示をして、本が家にある風景がイメージしていただきたいですよね。

2014年に刊行された、注目のブックデザイン 日本編

今年の「代官山BOOK DESIGN展」では、2014年に刊行された国内外の書籍から、番場氏、三條氏が特に注目する日本発のブックデザインを紹介してもらった。

三條:2014年は、日本のデザイナーだと田中義久さんがすごく活躍している印象を受けました。『疾駆』(YKG publishing刊)は田中さん自身がデザインだけでなく内容の企画や取材の立会いまで行っているインディペンデントマガジン。これはデザインも内容もすばらしいですよね。

番場:すごくいいですよね。毎回表紙がしおりになっているのも楽しいですよね。

三條:川内倫子×テリ・ワイフェンバック(Terri Weifenbach)の『gift』(AMANA刊)も田中さんのデザインですね。本を作るときって読みやすさや流通する際に破損しにくい造本か、そして、予算なども考慮すると思うんですが、そこをかいくぐってやりたいことをやるのは、本当に実力がある人じゃないとできない。田中さんはそういうデザイナーだと思うんです。

番場:SHUNGA』(パイインターナショナル刊)は、春画(江戸時代に流行した性風俗が描かれた浮世絵の一種)の本。春画の紹介ではあるものの、ひとつの絵をクローズアップしていて、すごく見応えがあります。春画は海外でも人気があって洋書ではよく出版されるんですけど、日本で改めて春画の本が出版されることってあまりないので、おもしろい試みだと思います。中も和紙をイメージした紙を使っていて、見た目の印象よりも軽いのもいい。『KATACHI』『KINGYO』などの人気シリーズを手掛けている高岡一弥さんというキャリアのあるデザイナーが手掛けている、安定したいいデザインの本だと思います。

三條:アントニン・レーモンド(Antonin Raymond)の『アントニン・レーモンド建築詳細図譜』(鹿島出版会刊)は、1938年に初版が発売されて以降2回復刊されているのですが、2014年に再復刊しました。これのすごいところは、初版を忠実に再現しているところ。タイトルにも「建築詳細図譜」とあるので、本もディティールまでこだわって復刊しているところが建築の本らしい。写真やレイアウトも当時のままなのもおもしろいですよね。

番場:写真を斜めにずらしてレイアウトするなど、こういう構成は今の本では見たことないですよね。

三條:ちょっと古くは見えるけど、それも新鮮ですよね。科布のクロス表紙、鉄製スパイラルリング製本、紙までオリジナルにできるうる限り近づけていると思います。復刻する際、予算の関係でハードカバーがソフトカバーになったりすることもあるんですけど、リング製本まで完璧に復刻しているものはなかなかない。15,000円くらいする本ですし爆発的なヒットはないと思うけれど、そういう本をここまで気合いを入れて作ったというところがすばらしいですよね。レーモンドの著作は他にもありますが、作品集と呼ばれるものはこの『アントニン・レーモンド建築詳細図譜』くらいなので、そういう意味でも貴重です。


リトルプレスから出版社の刊行する書籍まで、あらゆる本を見尽くしたアート&建築コンシェルジュならではのセレクトは、ブックデザインの新たな視点を与えてくれそう。手に取って、日本ならではのブックデザインとは何か、あらためて思考をめぐらせたい。

(文:岡崎咲子)

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>代官山 蔦屋書店が選ぶ、おもしろい海外のブックデザイン。映像×写真の作品集、1950年代の『VISIONAIRE(ヴィジョネア)』まで
>万城目学のご当地限定本に温泉街滞在型アート!? 歴史ある城崎温泉が「本とアートの街」に

【代官山 蔦屋書店】
アートコンシェルジュ 番場文章 氏

都内の写真ギャラリーで書籍担当をする傍ら、“店舗を持たない本屋”「BAMBA BOOKS」としてアートブックを出版。2011年より同店のコンシェルジュに。アートのなかでも特に写真分野に詳しい。注目している作家は、1940年代後半からカラー写真に取り組んでいたアメリカ人写真家、ソール・ライター。

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【代官山 蔦屋書店】
建築・デザインコンシェルジュ 三條陽平 氏

TSUTAYA TOKYO ROPPONGIで建築・デザインの担当をした後、2012年から代官山 蔦屋書店のコンシェルジュに。月に一度、建築物を見るために地方へ出かけることをライフワークとしている。今後は海外、特にニューヨークやスイスの建築を見に行くことが目標。

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