デーモン閣下 悪魔が歌う癒しの旋律 ニューアルバム『うただま』インタビュー

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これは悪魔のヒーリングなのか? それとも悪魔の囁きか? ハードロック、ヘヴィメタルのイメージを覆すデーモン閣下のニューアルバム『うただま』が11月8日にリリースされた。

日本の伝統楽器や民族楽器をバックに「少年時代」や「見上げてごらん夜の星を」などの昭和の名曲から「故郷(ふるさと)」、「君が代」、古代から奏でられている雅楽「千秋楽」にメロディと歌詞をつけた独自楽曲など、閣下の知る人ぞ知る“もうひとつの顔”に癒されずにはいられない。

ちなみにアルバムのジャケットとブックレットを手がけたのはパラパラ漫画でもおなじみの鉄拳で、『うただま』の温かくノスタルジックな世界をみごとに表現。どんな角度から聴いても見ても楽しめるアートなアルバムが完成した。(インタビュー&文:山本弘子 撮影:コザイリサ)

デーモン閣下

デーモン閣下

デーモン閣下といえばハードロック、ヘヴィメタルのイメージが強いですが、ニューアルバム『うただま』は懐かしい曲を中心にカバーした日本人の心に焦点を当てたような作品になっています。なぜ、こういうアルバムを制作しようと思ったのですか?

こういうアルバムを作ろうと言い始めたのは吾輩ではないのだな。

—そ、そうなんですか?

吾輩は今年の3月に世の中でのイメージを踏襲するハードロックを中心とした『EXISTENCE』を発売したのだが、そのアルバムの計画を立てている段階で何年も一緒に制作しているプロデューサーに「実は閣下のイメージと限りなく逆の方向のアルバムをもう1枚作りたいと思っている。静かな曲だけではなく、リズミカルな曲もあってもいいが、全体を通して優しい気持ちになれるようなものを作りたいんだ」と言われて「あ、そう?」と(笑)。そのプロデューサーが言うには吾輩にはハードロック、ヘヴィメタルを歌っているイメージが確立されているけれど、ほかにもいろいろな音楽活動をしていることは世の中には広く認知されていないと。せっかく長く活動しているのだから、そういう音楽も見聞きさせたいということだったのだな。

—『うただま』には尺八や箏、篳篥など日本の伝統的な楽器も多く取り入れられています。閣下はお相撲好きでもあるので、邦楽器にもご興味が?

吾輩は日本の純邦楽器をフィーチャーして、その楽器とタイマンを張ってやるコンサートをもう30年やっている。聖飢魔IIを解散してからは、そのコンサートがシリーズ化してな。「邦楽維新Collaboration」という名前でもう75回も開催しているわけだが、ありとあらゆる純邦楽器に合わせて歌ったり、朗読をしたりしてきた積み重ねがあるので、プロデューサーの「アンプラグド的な感じでやるのは面白いよね」という案に同意したのがいきさつだ。別の言い方をすると日本のポップス、ロックシンガーの中で純邦楽器についていちばん詳しいのは吾輩だと思うぞ。どこの楽器がいつ頃に日本に渡ってきて、何の楽器と交わってどう発展していったかスラスラ言えるからな。

—お見それしました。では、今作に入っている邦楽器とはステージで共演済みなんですね。

日本の純邦楽器はそうだな。尺八、箏は50回ぐらい共演したことがあって、今回、初めてだったのはリュートと二胡。

—この曲ではこんな楽器を使ってこういうアプローチをしたいという提案や選曲も閣下自身がされたんでしょうか?

吾輩だけではなく、聖飢魔II、ソロと全てサポートしてくれている松崎雄一氏というキーボーディストでありアレンジャーとプロデューサーの3名で選曲をしながら楽器を決めていったな。「この曲を閣下に歌わせたいけれど、普通のポップスにはしたくないから、どんな楽器が合うだろう」とか。今回は極力、楽器を少なくしたかったから、いわゆるエレクトリックなドラム、ギターは入っていないんだが、そうなると難しいことも出てきてな。

—リズムがないからですか?

そう!リズムをちゃんとひっぱっていく楽器がないからだな。吾輩たちもそうだが、聴く側も打楽器がないと違和感がある。その兼ね合いは難しかった。

 

 

—楽曲のことについてお聞きしたいんですが、閣下が歌いたかった世仮の幼少期の懐かしい思い出がある曲は?

絶対、やりたいという曲はなかったが、前々から歌ってみたかった曲は「見上げてごらん夜の星を」だ。吾輩自身、昔から好きな歌だったのだが、提案する前にプロデューサーのリストに入っていたからな。

坂本九さんでおなじみの「見上げてごらん夜の星を」はピアノをバックに閣下が歌われていますが、歌と演奏が寄り添っていて、まさに夜空の星が浮かんでくるような曲になっていますね。

この曲はピアニストと顔を見合わせながらクリックを聞かずに“せーの”で録ったのだ。バンドではドラム、ベースと順番に録っていくから吾輩自身、初めてのレコーディング形態だったんだが、歌とピアノだけだからテンポの揺れも含めてその方が味が出るだろうなと。

井上陽水さんのカバー「少年時代」は尺八と箏をバックに歌われています。

うむ。何回かご本人にも会ったことがあるし、この曲も「邦楽維新Collaboration」で歌ったことがあるんだ。

—アレンジが素晴らしいですね。

これも吾輩の歴史の産物の1つだな。邦楽器のコンサートでは朗読もしているのだが、シリーズ化していく中で「小説じゃなくて漫画を読んでみるのも面白いかもしれない」という話になって、手塚治虫氏の短編漫画「カノン」を読んだことがあった。朗読のバックにパッヘルベルの「カノン」を演奏してもらって、そこから「少年時代」に移行していくという構成でやっていたのだが、この2曲はコード進行が似ているので、だったら「カノン」を取り入れたアレンジにしてみようと。5年ぐらい前に披露したところ、非常に評判が良かったので、今回の「少年時代」も尺八と箏での間奏で「カノン」を演奏している。

—「少年時代」のミュージックビデオはどんな映像になっていますか?

これは面白いぞ。「邦楽維新Collaboration」に参加してもらったことがある田村(祐子)女史のサンドアートを取り入れた映像になっている。指を使って砂で絵を描いていく人なんだが、箏や尺八も映りこみながら、砂絵が次から次へと展開していくという。長年のコラボレーションがミュージックヴィデオにも凝縮されている。

—ほかに閣下が思い入れが強い曲はありますか?

 

『WHEN THE FUTURE LOVES THE PAST ~未来が過去を愛するとき~』 

そうだな。『うただま』に収録されているのはインタールード(天地人)の3題目を除いて10曲の内、8曲が既成曲なんだ。とは言っても「砂漠のトカゲ」(NHK番組「Eテレ2355」の「おやすみソング」)と「toi toi toi !! - うただま編 - 」(「Eテレ0655」の「おはようソング」「おやすみソング」)のオリジナルシンガーは吾輩で、ドヴォルザークの「新世界より」の歌詞を自分で書き直している曲も収録されている。オリジナルはセルフカバーの「Zutto」(『WHEN THE FUTURE LOVES THE PAST ~未来が過去を愛するとき~』(魔暦5(2003)年収録)と雅楽と一緒にやっている「千秋楽 -雅楽・磐渉調古典曲をモチーフとした独自楽曲- 」なのだが、これは自分の歌では初めて披露するので思い入れはあるな。

—「千秋楽」にはどんなイメージがあったのでしょうか?

これには長い話があってな。まず、「千秋楽」について説明すると、これは千何百年前からずっと受け継がれている雅楽を知っている人たちにはスタンダード中のスタンダードの曲。正月にラジオやTVで流れる「越天楽」のように有名ではないので世間一般にはほとんど知られていないが、雅楽の世界では行事があるたびに最後に演奏される曲が「千秋楽」。ここから由来して相撲や歌舞伎の最終日を千秋楽と呼ぶようになった。

—なるほど。そんなに長い歴史があるんですね。

前置きが長くなった。何年も前に、この曲をアレンジして篳篥を吹いている稲葉明徳という人間が「実は“千秋楽”に現代風のコードを当ててみた曲をずいぶん前から温めていて、閣下に力士の断髪式や引退の儀式を讃える意味を込めてメロディと歌詞をつけてほしいんです。閣下が歌うから意味があると思うのでやりませんか?」と言ってきてな。そうは言われても作品として発表する場がなかったから、他のレコーディングの空き時間に稲葉氏とこっそり作っていて(笑)。

—(笑)ちょっとずつ制作していたんですね。

うむ。ただ吾輩が歌う前に一昨年、ピアノをバックに男性合唱団が歌うものが発表はされているんだ。とは言え、雅楽器にピアノとベースが入った演奏をバックに吾輩が歌う「千秋楽」をついに発表する時が来たという意味では非常に感慨深いものがあるな。この曲は雅楽を知っている人からしたら、「後ろで鳴っているのは古典のまんまの演奏だな」と分かるんじゃないかな。稲葉氏にとっては30年ほど温めてきたからなおさら感慨深いかと。

—今回の企画があったからこそ、入った曲だと思うと運命的ですね。

だから、誰か引退するんじゃないかと(笑)。というのも魔暦5年に珍しく相撲について真正面から歌った「土俵の魂“A Sprit of Sumo”」という曲をスタジオで歌い終わった時にニュースを見たら仲良くしていた力士、安芸乃島が引退を発表したんだな。そもそも稲葉氏も「そろそろ誰か引退する日も来るだろうし」と吾輩にこの曲を託したのでアルバムのリリース日が気がかりでならない(笑)。

 

 

—全体に郷愁感が漂っていますが、閣下は『うただま』をどんなふうに楽しんでもらえたら嬉しいですか?

いろいろな聴き方が出来るんじゃないかと思っているけどね。外国に赴任している日本の企業戦士が母国のことを思いながら聴くのもアリだろうし、楽器のヴァリエーションひとつとっても我々が初めて目の前で見る楽器もあるので、全曲、学校の授業で紹介したら、ものすごく贅沢な授業内容になるんじゃないかと。

まぁ、こんなこと悪魔に言われてもと思うだろうが(笑)。いろんな世代が聴けるんじゃないかと吾輩は思っている。田舎から出てきた大学生が「故郷(ふるさと)」を聴いてもいいだろうし。「故郷(ふるさと)」と「君が代」は曲順で絶対セットにしたくて。

—その2曲は閣下としても入れたかったんですか?

「君が代」に関しては、選曲していく過程で稲葉氏が「閣下、実はもうひとつアイディアを持ってるんですよ」って何年か前に聴かせてくれたのを思い出したんだ。

—(笑)再び、稲葉さんが。

そう。それが4〜5年前でピアノで始まって篠笛がメロディを奏でているのが新鮮だったのを急に思い出してスタッフに聴かせたら、「いいですね。ただ、何か問題が起きるのかな」って。「君が代」って思想的な部分や楽曲の持つ歴史で捉えられがちだけど、純粋にこの曲のメロディや歌詞の良さに焦点を合わせたアレンジなので、音楽として「君が代」を捉えようと。

—閣下の歌を聴いたときにフラットに「いい曲だな」と感じました。

うむ。あまり今まで目が向けられていなかった『曲としての良さ』にスポットを当てたという点である意味、新しいかもしれないな。3年ぐらいブラジルの工場とかで働いていて「今日は疲れたな」と思った時に「故郷(ふるさと)」と「君が代」をセットで聴くっていうね。海外にいる日本人を泣かせる企画(笑)。

—悪魔に癒されて号泣しますよ。

いや、わからんぞ。悪魔の囁きによって「やっぱり、帰る」って仕事を投げ出して日本に帰ってきちゃうかもしれない(笑)。

—ははは。先ほどチラッと話に出たドヴォルザークの曲に閣下が歌詞をつけた「今も翔ぶ -From The New World- 」も原曲は故郷がテーマになっていたりすると思うんです。日本の失われつつある景色を伝えたいとか、ノスタルジーを表現したいという想いは閣下の中にあったんでしょうか?

それはない(笑)。深層心理にはあるかもしれないけれどな。ドヴォルザークを入れたのは実を言うと吾輩の世を忍ぶ仮の父親が「新世界より」が大好きで、年中、我が家でかかっていたから。第2楽章は日本では「遠き山に日が落ちて」や「家路」の歌詞が有名だが、昔に書かれた歌詞だから歌ってみたら現代では使わない言葉もあって違和感があり、「吾輩が書く」って(笑)。ずーっと昔から慣れ親しんでいた曲でもあるので、書けばいいんだと。

—いっぱいエピソードがありますね。

ある。初回生産限定盤のDVDには録り下ろしインタヴューも入っているのだが、気がついたら1曲につき10分以上語っていたものが幾つも!(笑)。

—楽器のことを考えたら大変なことだとは思いますが、『うただま』のコンサートは実現するのでしょうか?

ないな。このアルバムの通りに生で再現しようと思ったら、20人以上のミュージシャンが必要だからな。逆に言うと珍しくコンサートのことを考えずに1曲、1曲がいちばん効果的に聴こえるように考えて作ったものなので、一回で『全曲再現』のコンサートは難しい。稲葉氏がいたら3曲ぐらいはできるかもしれないがな(笑)。

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デーモン閣下 リリース情報

初回生産限定盤

通常盤

うただま

2017年11月8日発表

初回生産限定盤:BVCL-844~5 (CD+DVD) 3,600円(税抜)
通常盤:BVCL-846(CD) 2,800円 (税抜)

※初回生産限定盤には、ミュージックヴィデオとデーモン閣下録り下ろしインタヴュー映像等を収録したDVD付き

1.「少年時代」 2.「砂漠のトカゲ」 3.「見上げてごらん夜の星を」 4.「千秋楽 - 雅楽・盤渉調古典曲をモチーフとした独自楽曲 - 」 5.「Interlude – 人 - 」 6.「やつらの足音のバラード」 7.「今も翔ぶ - From The New World - 」 8.「Zutto」(新録self cover曲)  9.「Interlude – 地 – 」 10.「故郷(ふるさと)」 11.「君が代」 12.「toi toi toi - うただま編 – 」 13.「Interlude – 天 – 」

デーモン閣下オフィシャルwebサイト

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