世界の「鬼」の不思議に迫る! そして意外なところにも…

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節分では豆をまいて鬼を追い払ったり、あるいは仮面を被って自ら鬼になったりした人も多いのではないだろうか。季節が移り変わる節目に、厄や災難を祓い清める追儺(ついな)の行事として中国から伝わった節分は、日本では今や民間行事となっている。

「鬼というと日本独特のものというイメージがありますが、実は、世界にはさまざまな鬼がいるのです」と話すのは、代官山 蔦屋書店の児童書コンシェルジュ山脇陽子氏だ。

日本の鬼、そして世界の鬼についての話を聞くと、奥深く、意外な背景が見えてきた。

世界で姿、形、名前を変える鬼

日本には鬼が出てくる民話が数多く存在するが、実は世界の民話との共通点が多いそうだ。なかには、別の国の民話を日本版に書き換えたものもあるという。

「例えば『だいくとおにろく』という民話は、実は北欧神話に由来します。日本に持ってきた際に、トロールだった登場人物を鬼に書き換えたものです」

『だいくとおにろく』は、主人公が鬼の名前を当てる謎解きに挑戦するお話だ。こうした「謎解き」は、欧州の口承文学に多くの類型があるそうだ。たとえば、グリムの昔話では、ルンペルシュティルツヘン、イギリスの昔話では、トム・ティット・トットが同型。

「人喰い鬼という設定も多いですが、『赤ずきんちゃん』に出てくる狼男にも似ていますよね。鬼は人間が作った想像の生き物で、キャロル・ローズ著『世界の怪物・神獣事典』によれば、脅威的な地上の天災や厄病、人間の人智を超えたもの、また未知なるものや未踏の領域に挑戦した人々の失踪や変貌は目に見えない人間界の秩序を脅かす怪異なるものとして理解されました。それらは、トロール、巨人、竜、怪物、魔法使い、魔女と姿、形、名前を変容されて世界中に存在しています」

『世界の民話館』シリーズ

(ルース マニング=サンダーズ 著、西本 鶏介 翻訳、復刊ドットコム 刊)

復刊された待望の人気シリーズ。『魔法使いの本』『竜の本』『悪魔の本』『王子と王女の本』『怪物の本』『こびとの本』『巨人の本』『人魚の本』『魔女の本』『王と女王の本』の全10巻。「脅威であるはずの鬼たちは、一方で、昔話の中では、鬼や悪魔や魔女といったものでありながら普遍的な人間らしい生き方の象徴としても時代や地域、国境をこえて語られているものもあります。当シリーズは、イギリス、アイルランド、ドイツのように国ごとではなく、テーマ別に世界の民話を編集している点が特徴です。ふと共通点が見えてくるかもしれません。優れた挿絵も魅力です」

『だいくとおにろく』

(松居 直 著、 赤羽 末吉 絵、福音館書店 刊)

北欧神話を基にしたお話。主人公の大工が川に橋を架けるため、川に住む鬼の名前をあてる謎解きに挑む。「主人公が鬼に立ち向かってなんとかしようとする姿は、子どもに与えるものが大きいでしょう。風の噂で鬼の名前を知ることができるという偶然や鬼と大工とのやりとりなどの昔話らしいおもしろさも魅力です」

鬼との関わりから学ぶ人間の叡智

節分が季節の変わり目の行事であるように、民話で鬼が出てくるのは「境界地点」が多い。例えば橋や川、湖など、人間界とその一歩先にうごめく別世界との狭間である。そこを舞台に、未知なる「あちら側」から「こちら側」に鬼がやって来るのを防ぐ、追い出す、困難を乗り越えるというお話が展開する。思いがけないものからの協力や知恵によって困難を乗り越える、というのがお決まりのパターンだ。

こうした鬼を題材にした昔話の読み聞かせは、子どもにとって大切だと山脇氏は話す。

「こうしたわかりやすくて非現実的なストーリー展開には、子どもにとって大事な語りかけがあります。お話を通して困難乗り越えるための人類の叡智や、困難に立ち向かう希望を無意識の中で蓄えることができるのです」

また、手軽に映像が手に入る時代だが、子どもは言葉と少しの挿絵から、自分で想像してみることが重要だという。

「できあがった映像を受け取るだけでは、すぐに心から消えます。子どもがあらゆる五感を使って想像して、自分のなかで映像化したものは、後々まで心に残るのです」

『ゼラルダと人喰い鬼』

(トミー・ウンゲラー 著、たむら りゅういち、あそう くみ 翻訳、評論社 刊)

民話ではなくフランスの国際アンデルセン賞受賞作家によるオリジナル絵本。料理好きな少女がおそろしい人喰い鬼とばったり出会うが、あんまり腹ぺこだった鬼はたおれてしまう。かわいそうに思ったゼラルダが料理を振る舞う。「人喰い鬼と対峙する女の子の姿、おいしそうなご馳走の数々に、子どもは釘付けになります。さらに、著名な詩人田村隆一さんのリズミカルな明るさと軽妙な名訳が一層魅力的なものにしています」

鬼はあなたの心のなかに

日本語には「鬼の形相になる」という言葉がある。また、般若の面は、人間の女の嫉妬や怒り、悲しみを具現化した鬼だと聞く。

「昔は今よりも一夫多妻制、男尊女卑、権力の違いといった女性ならではの苦しみや怒りがありました。また、少数民族同士の戦いでは、征服者は征服する相手を鬼や邪鬼と呼び、反対に征服される側は征服者を鬼扱いしてきました。人を羨む、嫉妬、怒りといった、鬼になるものは人間の心の中にも住んでいるのです」

一方で龍神雷神といった、神様の姿をした鬼もいる。鬼は時に悪いことをしたら叱ってくれる存在であり、そして私たちを守ってくれる存在でもある。それらは、人間に信頼され、崇め奉るありがたい存在として、あるいは、神秘や魔力の象徴として家の紋章や街の巨人として取り込まれている。

『鬼が出た (たくさんのふしぎ傑作集) 』

(大西 広 著、梶山俊夫 絵、福音館書店 刊)

子どもの代表的な遊びである「おにごっこ」から日本の鬼の歴史、鬼の世界図などを解説。「鬼の幅広さを考えさせてくれる一冊です」


「鬼」とひと言で言っても、実に奥深い。鬼についての知識を深めることは、日本と世界の文化、そして人間の心の世界を知ることに繋がるのかもしれない。

(文: 山岸早瀬)

【代官山 蔦屋書店】
児童書コンシェルジュ 山脇陽子 氏

2011年オープン当初から同店のコンシェルジュへ。大学・大学院時代は日本語日本文学の古典文学を専攻し、高校の国語教師の免許を取得。育児が文学としての児童書を見直すきっかけに。ファミリーで楽しめる世代を越えて読み継がれる名作やライフスタイル提案を行っている。

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