移住での仕事探し、事例取材から見えてきた7つのヒント

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近年高まる地方移住への関心。たしかに、都市部とは違った豊かさのある地域での暮らしは魅力的だが、不安材料も多い。では実際はどうなのか? コロカルでこれまで取材してきたいろいろなケースを見ながら、地方移住へのヒントを探っていこう。

【移住定住を考える人の、若年化】

「国土交通省白書」によると、地方から都市への人口流出は続いているものの、過疎地域で人口の社会増を実現した市町村が占める割合は、横ばいまたは微増傾向にあるという。

また、地方移住というと、かつてはリタイア後、老後の暮らしの選択肢として考えられていたのが、近年では地域を志向する若年層が増えている。同白書によると、「2005年調査に比べ2014年調査では、30代の農山漁村への定住願望が17.0%から32.7%へ、40代では15.9%から35.0%へと伸びている」というのだ。

「国土交通省白書・都市住民の農山漁村への定住願望」

ただし、「いますぐ」というわけではなく、「いずれ」そうしたいと考えている人が多いのも事実。移住を実現するにはまだまだ大きな壁があるようだ。

【移住を考えるとき、
いちばん重視するのは?】

移住を考えるときに、人は何を重視しているのだろう? 移住希望者が移住定住に際して重視する条件として挙げられるのは、以下のようなポイント。

■ 日用品の買い物環境

■ 交通インフラの充実度

■ 地域の固有の魅力

■ 収入源

都市部で暮らす人にとって地方での暮らしは魅力的だが、やはり利便性が失われたり収入が減少することには抵抗があるようだ。

また同白書によると、現在の居住地に住むようになった理由として、Uターン者は「実家・家業を継ぐため」、I・Jターン者は「現在の居住地でやりたい仕事がある」という回答が突出して多いという。このようなことから、地方移住はやはり、仕事と密接な関係があるといえる。

【移住先はどこが人気?】

では、どんな地域が人気なのだろう? ふるさと暮らしを希望する都市住民と地方自治体のマッチングを行うNPO法人〈ふるさと回帰支援センター〉が実施した地方移住に関するアンケートによると、2016年の移住希望地域ランキングは以下のとおり。

1位 山梨県

2位 長野県

3位 静岡県

2015年は1位が長野県、2位が山梨県で、上位2県が入れ替わったが、南アルプスや八ヶ岳といった豊かな自然に恵まれ、都心へのアクセスもしやすいことが人気の理由かもしれない。

また移住相談件数は26426件と、前年から22.4%増加。相談者は20~40代の割合が68%を超え、Uターン希望者も32.5%と、若年層のUターン志向が強まっていることがうかがえる。

また調査結果では、「調査開始以来初めて移住先選択の条件として『就労の場があること』が『自然環境が良いこと』を上回り、地方都市を希望する人の割合が5割になったことから、これまでの『田舎暮らし』だけではない『地方暮らし』という新しい動きが出てきている」としている。このようなことからも、移住を考えるときは、やはり「仕事」が一番大きなポイントとなりそうだ。

ちなみに、ふるさと回帰支援センターには自治体が移住サポートの窓口を設置している。こういったところに相談してみるのもひとつの手段。センター内にある〈ひろしま暮らしサポートセンター〉を通して実際に移住した人を取材した記事がこちら。

「声をつないで、縁をつくる。移住者を引き寄せる広島県の試み」

【地方でどう働く? 仕事はどう探す?
7つの方法】

では、実際に地方でどう働くのか? 仕事はどう探したらいいのか? 具体的なケースを見ていこう。

移住での仕事探し
ケース1 自治体の就業支援制度を利用

自治体では、Uターン者やIターン者に向けて就業支援を行っているケースも多い。首都圏で行われる体験イベントなどに参加して、情報収集するのも有効だ。

「国や自治体は強力な『移住サポーター』」

「知らないと損する全国自治体支援制度8496 2016年度版」

たとえば長崎県では、キャンピングカーで移住先探しができるというユニークな取り組みも。旅しながら先輩移住者や地域住民などへの移住相談ができ、空き家の見学や求人を行っている企業の見学などもできるのだ。

「キャンピングカーでラクラク!長崎・移住先探しの旅」

ほかにも長崎県は“究極の島おこし”の人材募集をして話題に。

「年収1200万円!悩み多き離島の『究極の島おこし』人材募集中」

(※現在は終了)

また、移住を考える人に向けて就業についても紹介するイベントが都内で行われることも。

福島県「ふふふカフェ おいでよ、福島。」

秋田県「くらし×しごとTalk」

(※上記イベントは終了)

移住での仕事探し
ケース2 求人情報サイトへの登録

いわゆる求人・転職サイトでも、UターンやIターンの転職に特化した情報を掲載しているところもある。こういうサイトに登録しておくのもいいかもしれない。

マイナビ転職 Uターン・Iターン転職

デューダ Uターン・Iターン転職

リクナビNEXT「意外と知らないU・Iターン転職のメリット・デメリット」

また、地方での求人を取材して紹介しているサイトもある。こういったサイトをまめにチェックしても。

日本仕事百貨

移住での仕事探し
ケース3 リモートワーク

現在はインフラの普及により、働き方も多様になっている。インターネット環境があれば、SEなどIT関連の技術職や、デザインなどの技術を持ったクリエイティブ職は、都心の会社に出社しなくても仕事が可能だ。もちろん、すべての人が可能というわけではないが、今後オフィスワークだけでない働き方はさらに増えていくだろう。

徳島県神山町では、早くからインフラを整え、古民家の空き家を活用したサテライトオフィスの誘致に成功している。こういったことに積極的な地域を移住先に選んでみるのもいいかもしれない。

「四国の山里で働くという選択 IT企業が惹きつけられる町・徳島県神山町」

移住での仕事探し
ケース4 地域おこし協力隊

地域のために働きながら報酬を得られる 「地域おこし協力隊」に応募するという手も。

◎そもそも「地域おこし協力隊」とは?

移住・交流推進機構の上記HPによると

「人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に受け入れ、地域協力活動を行ってもらい、その定住・定着を図ることで、意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度」。

自治体によって条件などは異なるが、おおむね1年から3年の期間で、その地域で生活し、地域のためになる活動をすることが前提。活動のための活動費や報酬も自治体によって異なるので、興味がある地域を調べてみては。上記HPで検索もできる。

この制度は、総務省が行っているもので、総務省が各自治体に必要な財政上の支援を行っている。つまり、国と自治体のお金でまかなわれているのだ。

地域おこし協力隊員は、地方自治体から委嘱を受けて活動することになるので、応募も各地方自治体に申し込み、採用の可否が決まる。地域おこし協力隊員になると、その地域に住民票を移さなければならないので、腰を落ち着ける移住先として考えることも大切。

◎実際に何をするの?

「地域協力活動」として何をするのかも、その地域に求められていることによってさまざま。具体的に仕事が決まっているというよりは、隊員が主体的に何をするかが重要だ。

任期も最長3年なので、その後どうやって生きていくかも含め、自分でさまざまな可能性を探りながら仕事をつくっていくことが大切だろう。

実際に地域おこし協力隊として移住した人が、どんな仕事をしているか、いくつかの記事で見てみよう。

任期終了からゲストハウスを起業。

「富士山のまちに新しい流れを呼び込むゲストハウス〈hostel&salon SARUYA〉」

任期中に古民家活用や情報発信事業を起業。

「飛騨に移住した人たちに聞く「起業」 「ルールもマナーもわからない」。思いきった方向転換を果たした2人の起業の心得」

任期中の活動を生かし野草を活用する事業を起業。

「野草を活用して甲州市に移住。〈摘み草のお店 つちころび〉鶴岡舞子さん」

移住での仕事探し
ケース5 自営業/起業

地域おこし協力隊として活動しながら地域のニーズを知り、地域になじんでから起業する人もいれば、最初から自分たちでやりたいことをする、という移住者も。

移住して農業をやりたい、という人も多いだろう。新規就農者はまず畑を借りるところから大変という話も聞くが、45歳未満の人が新規就農する場合は、国からの補助制度もある。

農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)

コロカルでも連載中の、小豆島に移住して農業をしている三村ひかりさんたちもこの補助制度を利用している。

「小豆島に移住して5年、1日1日積み重ねていく 小豆島日記」

自分たちがやりたいことと、その土地だからできることを組み合わせて仕事にしている人も。神奈川県真鶴町の〈真鶴出版〉は、出版業をしながらゲストハウスを営んでいる。

「ゲストハウスと出版。〈真鶴出版〉の新しい仕事のかたち」

空き家を再生させた建物で、自分の店を持つという夢を実現させた、いなべ市の〈上木食堂〉。

「仕掛人は若い農家と料理人。元旅館の空き家を再生した、三重の〈上木食堂〉へ」

クリエイティブディレクターとして働き、飛騨にUターンして自分の事務所を設立。

「飛騨に移住した人たちに聞く「起業」 「ルールもマナーもわからない」。思いきった方向転換を果たした2人の起業の心得」

移住での仕事探し
ケース6 二拠点生活

いきなり移住するのはたしかにハードルが高い。都市部の利便さも捨てがたいという人は、二拠点暮らしを視野に入れてもいいかもしれない。

東京・恵比寿に事務所を構えながら、新潟県十日町市の古民家でカフェ&ドミトリーを運営し、「ダブルローカル」を提唱する後藤さんと池田さんの記事。

「山ノ家、ときどき東京」

持続可能な暮らしと循環する農業を実践する山梨県北杜市の〈ぴたらファーム〉には、東京と二拠点で暮らすスタッフも。

「山梨県北杜市〈ぴたらファーム〉と二拠点生活スタッフ「マメちゃん」の自然循環型の農業と暮らし」

都市と行き来しやすいメリットを生かした移住推進プロジェクトを展開する自治体も。東京との距離、自然と都会のバランスなどが「ちょうどいい」、東京と宇都宮の二拠点生活を紹介。

「新しい暮らしの楽しみ方。「宇都宮ダブルプレイス」のすすめ」

島で暮らし都市で遊ぶ、またはその逆に、都市で暮らし島で遊ぶなど、島と都市を行き来するライフスタイルを提案。

「〈島&都市デュアル〉神戸市、芦屋市、淡路市、洲本市が連携する、島&都市を行き来する移住推進プロジェクト始動!」

また、これはおもに企業向けだが、東京と長野を行き来する働き方を提案する、シェアオフィスのニュース。

「〈富士見 森のオフィス〉標高1,000mにシェアオフィス?長野と都心、二拠点を行き来する働き方の提案」

移住での仕事探し
ケース7 複数の仕事を持つ

「小商い」という言葉も聞かれるように、賃金が都市部ほど高くない地域では、小さな仕事をいくつか持つ人も少なくない。楽しむ仕事と稼ぐ仕事をバランスよく持てるのがベストだろう。

昔から半農半漁をなりわいとしていたという石川県の能登島。民宿を経営する漁師や、地域おこし協力隊として働きながら人手が足りない一次産業を手伝う人も。

「能登島に島流し? つながりを生む体験ツアー〈うれし!たのし!島流し!〉」

あえて仕事を決めずに移住した人もいる。なかなか思い切った決断だが、その土地での縁を大切にしたいという思いから、いくつかのなりわいを得たケース。

「仕事を決めずに移住? 新しい土地でナリワイを見つける」

そんな彼らの手本となるような、地元のお母さんの話。

「二足、三足のわらじを履く『らんぷはうすのお母さん』に下田の民謡舞踊を習う」

この移住者夫婦の妻の仕事はカメラマン、最近は「カメラマン、ときどきパン屋」になりつつもある。いずれはゲストハウスもやってみたいという津留崎家の連載はこちら。

「暮らしを考える旅 わが家の移住について」

【移住と仕事を考えるうえで大切なのは……】

ここまで移住に関するさまざまな情報を紹介してきたが、どこに移住するにも情報収集が大事。その情報収集はネットで検索するだけでなく、移住相談窓口などに足を運んだり、イベントなどで実際に人に会って話を聞くこともおすすめ。都内で先輩移住者との交流ができるイベントなども、随時開催されている。

そして次に、気になる場所には実際に足を運んでみては。結局、移住の決め手となるのは人との縁だったりもする。そして、理想論だけでなく、何が一番大事だと考えるか、家族と一緒に移住について考えてみてほしい。

コロカル「移住」に関する記事一覧

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Ichico Enomoto

榎本市子

えのもと・いちこ●エディター/ライター。コロカル編集部員。東京都国分寺市出身。テレビ誌編集を経て、映画、美術、カルチャーを中心に編集・執筆。出張や旅行ではその土地のおいしいものを食べるのが何よりも楽しみ。

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