『奇界遺産』写真家・佐藤健寿✕音楽家・Ametsubがクリエイティブと旅を語り合う。『TRANSIT』特別編集号トークショー

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「旅すること、創ること」

(C) KENJI SATO

「旅すること、創ること」

創刊以来、「美しきもの」を求めて世界中を旅してきたトラベルカルチャー誌『TRANSIT』。その中には、説明のつかない「不思議なもの」「珍妙なもの」も含まれている。世界の不思議を求めて、前身雑誌である『NEUTRAL』時代から8年もの間、さまざまな場所を訪れて読者に届けてきたのが、「クレージージャーニー」(TBS)でも知られるフォトグラファーの佐藤健寿さんだ。

TRANSIT 佐藤健寿 特別編集号 美しき不思議な世界』は、佐藤さんが発表してきた作品の総集編。代官山 蔦屋書店で開かれたトークイベントでは、佐藤さんが敬愛する音楽家のAmetsubさんをゲストに迎え、「旅すること、創ること」をテーマに、特別編集号のエピソードや旅、写真、音楽の関係性が語られた。聞き手は代官山 蔦屋書店の旅行コンシェルジュ・荒木左地男氏。


佐藤さんの熱意でレアなトークが実現

「旅すること、創ること」

荒木左地男氏(以下、荒木):今回の『TRANSIT 特別編集号』は、いわば『TRANSIT』における佐藤さんのマイルストーンをまとめたようなものです。まずは皆さんも気になっていらっしゃるであろう、ゲストのAmetsubさんと佐藤さんとの関係を教えていただけますか。

佐藤健寿さん(左)、Ametsubさん(右)

佐藤健寿さん(左)、Ametsubさん(右)

佐藤健寿氏(以下、佐藤):最初は僕がAmetsubさんの一方的なファンだったんです。それでお会いして話したところ、Ametsubさんも旅が大好きだとうかがって。ちょうど僕のイベントでも音を使いたいシーンが増えており、共感できる部分が多いと感じて、お声がけしました。ただ、最初は「音楽以外で人前に出たくない」とものすごく嫌がられました(笑)。

Ametsub氏(以下、Ametsub):僕は人から注目されることが昔から苦手(笑)。最初はお断りしたのですが、一年後にもまた誘っていただいてここまで言って下さるからには、何かあろうだろうと。ミューシャン同士で対談するより、旅というテーマのもとで音楽と写真、異なる分野同士が話すのは面白いかなとも思いました。

佐藤:Ametsubさんの音楽は、屋外で自然音を録音するフィールドレコーディングも重要な要素を占めています。その音の世界が旅を連想させるという点も、僕にとって興味深いところでした。

荒木:Ametsubさんがトークイベントという形で出演されるのは今回が初めて。「佐藤さんとなら」というわけだったのですね。


呪われた島で“消えた写真”?

「旅すること、創ること」

荒木:今日はそんなおふたりの旅の話です。次は佐藤さんから今回の『TRANSIT 特別編集号』の制作秘話などを教えていただけますか。

佐藤:『TRANSIT』はそもそも、「美しきもの」をテーマとしています。その中で異端なのが僕の特集(笑)。たとえば、今回の号にも掲載されていますが、ハワイ特集と編集者に提示されても、僕の場合は単にハワイの美しい風景を訪ねるのではなく、グアムからハワイへと至るアイランドホッピングの旅をやらせてほしいとお願いして実現したものです。

荒木:アイランドホッピングは太平洋の島々を飛行機で次々と移動する旅ですよね。

佐藤:グアムからハワイの間、チューク、ポンペイ、コスラエ、マジュロの4つの島をホッピングしました。旅行者のためというより、現地の人の移動手段として飛行機がバスのような形で運航されています。

「旅すること、創ること」

たとえば、チューク諸島の内海はサンゴが素晴らしく今や世界中のダイバーの憧れスポットですが、実は太平洋戦争の時に撃沈した日本軍のゼロ戦や艦船が数多く眠っています。また、次のポンペイ島にあるのが謎の海上遺跡ナン・マタール。最初にここを発見したドイツ人考古学者が謎の死を遂げるなど、呪われた遺跡と言われています。なんと、僕もここで撮った写真データがすべて消えてしまったんですよ。日本に帰国後業者に頼んで何とか復元できましたが、やはり……というか(笑)。この島の磁場が強すぎてデータが消えてしまうという説もあるそうです。

海上遺跡ナン・マタール

海上遺跡ナン・マタール

荒木:世界の「不思議なもの」を撮り続けてきた佐藤さんらしいエピソードですね。

佐藤:そうかもしれません(笑)。コスラエ島、マジュロ島も美しい島で、海とともに生きる子供たちの姿が印象的でした。ただ、実は今これらの島ではゴミが大きな問題になっています。ただ、現地の人々が悪いわけではないのです。彼らはもともとすべてが土に還るものとして生活してきたからゴミという概念がありません。そこにプラスチック製品をはじめとする文明が入ってきて、ゴミとして蓄積されることになってしまった。非常に考えさせられる社会問題です。

自然の音が音楽になるまで

音楽のパフォーマンスを見せてくれたAmetsubさん

音楽のパフォーマンスを見せてくれたAmetsubさん

荒木:Ametsubさんも音楽活動のかたわら、旅をされています。どんな場所に行かれているのですか。

Ametsub:僕が09年、12年に発売したアルバムは、どっちもアイスランドからのインスピレーションが強い作品です。特に09年のアルバムは、その前年にアイスランドに行ってフィールドレコーディングしたことが大きな要素となっています。アイスランドはそれ以来、年に一度は必ず訪れていますね。

佐藤:僕も最近アイスランドに行きましたが、この国は極寒ということもあって車がエンジンストップや携帯がつながらないケースが少なくなく、個人で周るならばいざという時のために車を二台用意したほうが良いとアドバイスされ、そうしました。ところが、Ametsubさんは、毎回一人でレンタカーを借りてテントや車に寝泊まりしている。本当にすごいんですよ。

Ametsub:お金がありませんでしたからね(笑)。

荒木:そもそもなぜ、アイスランドなのですか?

Ametsub:アイスランドはビョークやシガー・ロスなど世界的に有名な歌手を数多く輩出している国ですよね。彼女らはもちろんですが、OzyやYagya、Exosといったアンダーグラウンドなアーティストのどこか暗い音楽にも大きな影響を受けました。そんな音楽を生み出している国はどうなんだろうと興味を持ったのがきっかけです。アイスランドの旅では、運転して降りては、風の音をはじめ自然音などを録音する繰り返しでした。アイスランドでも唯一北極圏内にあるグリムセイ島では、氷をける音も録りました。

佐藤:Ametsubさんの音楽はそうやってつくられていくんですね。


ほかにも、Ametsubさんがフィールドレコーディングした音が音楽になっていく瞬間や、ミクロネシア、モロッコ、ブータンなどの佐藤さんの旅写真も公開され、大いに盛り上がった。ふたりのクリエーターの「旅すること、創ること」が間近に見られる機会となった。

(文:野間麻衣子)

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『TRANSIT | トランジット』公式サイト

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佐藤健寿(さとう けんじ)

武蔵野美術大学卒。フォトグラファー。世界各地の“奇妙なもの”を対象に、博物学的・美学的観点から撮影・執筆。代表作は、世界の珍奇な建築物や場所を撮影した写真集『奇界遺産』『奇界遺産2』(エクスナレッジ)をはじめ多数。テレビやラジオにも出演するなど、多方面で活躍している。

佐藤健寿公式サイト

Ametsub

音楽家。FLUSSI(イタリア)、STROM(デンマーク)、Fuji Rock(日本)、Sonar Reykjavik(アイスランド)などの大型フェスに出演。最新作"All is Silence"は新宿タワーレコードでSigur Rosやマイブラなどと並び、洋楽チャート5位に。極地への探究に尽きることのない愛情を注ぐバックパッカーでもある。

Ametsub公式サイト

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