Twitterフォロワー15万、夏生さえりインタビュー。『口説き文句は決めている』妄想とリアルの混合エッセイ本

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エッセイ集『口説き文句は決めている』著者・夏生さえりさん

エッセイ集『口説き文句は決めている』著者・夏生さえりさん

現実の延長線上にある未来のことを思い描いたり、非現実的なファンタジーの世界を空想したり。誰しもが頭の中で何かしらの“妄想”をしているのではないだろうか。さまざまな類の妄想があふれるなか、恋愛の妄想を日々Twitterに投稿し、合計15万人超のフォロワーを獲得しているのが“さえりさん”こと夏生さえり氏だ。

彼女の新刊『口説き文句は決めている』は、ウェブサイト「アマノ食堂」での連載「ティファニーで朝食を食べられなかった私たち」をまとめた一冊。テーマは、「食と恋」。疲れた身体と脳内に栄養&糖分補給をするような、甘酸っぱい恋愛の話が22篇収録されている。本書について、そして恋愛や妄想について、話を聞いた。

インスピレーションの源は、日常に潜んでいる

――さえりさんは“恋”と“妄想”というイメージが強いですが、これまで“食”について書こうと思ったことはなかったそうですね。

ないですね。食に関してあまりこだわりがないんです。世の中には食レポされている方がいっぱいいらっしゃいますが、それには及ばないというか。私、いつも同じ道を歩いてしまうタイプの人間なんですね。学校や駅までの道のりでもいろいろな道を歩いてみようという人もいますが、私はいつも同じ道を歩きながら、「いつもよりあの花が少しだけが咲いた」とか、同じ場所の変化を楽しみたいんです。

だから、“食”に関しても、お店の開拓はあまりできないし、名前も覚えられない。ただ今回は、(編集者から)食についての細かい描写やおしゃれなお店についてではなく、シチュエーションでいいと言われたので安心して書けました。食は意識してなくても毎日取っているものですし、恋と絡んだおかげで書くのはそれほど難しくなかったかもしれないです。特に今回は、ネットではあまり書かない実体験も混ぜながら執筆したので、私にとっても新鮮でした。

――Twitterで恋愛の妄想を投稿し始めたきっかけは何だったんですか?

前職の会社に所属していたとき、毎日が忙しすぎて、終電で帰って次の日の朝にまた会社行って……という繰り返しをしていたら想像力が死にそうな気がして。通勤時間が40分ほどあったので、そこでいまここにないものを考える時間を設けようとトレーニングとして始めたんです。文章の練習にもなるし、人にたくさん届くかどうかの挑戦の場にもなるし、想像力も死なずに済むし……と思ってやっていたら、恋愛系が一番反応がよくて。恋愛系に絞って毎日タスクのように投稿していたんです。

何に関してもそうなんですけど、私は“共有したい欲”がすごく強いんです。私が頭の中で見た映像と同じような映像を他の人にも見てほしいという気持ちが強いので、共有したときにイメージが異なりすぎないように重要なポイントを絞っていくんです。例えば、「白シャツを着ている」だけではなくて、「白シャツの袖はゆるっと腕まくりしてる」とか。140字という制限の中で文字数をどれだけ削るか考えているときでも、「ぴしっと着ている」のと「ゆるっと着ている」のじゃ全然違うと思うので必至に文字数を削ってみたり。謎の戦いをしていましたね(笑)。

夏生さえりさんのTwitterページ

夏生さえりさんのTwitterページ

――(笑)ストイックですね。

(笑)。妄想は無限大だからいいですよね。誰かの一言とかきっかけが豊富にあるので、今のところ妄想自体ができないということにはなってないのですが、(田舎にある)実家に帰ると全く妄想ができなくなるんですよ。それは街に人があまりいないから、人の生活の雰囲気を感じることができないからなんです。穏やかでいいところなんですけど、街を歩いていてもすれ違う人がいないし、会話も聞こえてこない。きっかけとなるようなものや無意識に拾っている情報があまりにも少なくて、妄想できなくなりますね。

――さえりさんの妄想には、都市であることというのが重要なポイントなのかもしれませんね。

そうかもしれないです。それは最近気付きました。やはり人の生活の端っこが感じられないといけないんだなと。私は意識せずにインプットするタイプで、本を読んだり映画を観たりするよりもふらっと街を歩いて帰ってくるほうが、インスピレーションが膨らむんです。

去年スペインに2カ月ほど行っていたのですが、そこでの恋愛の妄想はかなり難しかったです。キュンとするシチュエーションもスペイン人同士だとちょっと違いそうですよね。私の妄想はかなり日本人的だと思っているので、同じことをやってもスペインじゃキュンとしないだろうし、そう思うと書くのが一気に難しくなってしまって。会話でもいいし、視線の端っこにいるカップルでもいいので、日常を感じられる要素がないとだめなんだと思いました。そういう意味で、東京はとても好きですね。今のところは、東京で考えるのが一番向いていると思います。

作りたいのは、みんなが手を繋ぐ“横並びの関係”

――思考や妄想、物語を作る際に気をつけていることはありますか?

私が妄想を書く際に意識しているのは、10人が読んだときに2人くらいは体験したことがある、2〜3人くらいは似たような経験がある、1〜2人くらいは「こんなのあるわけないだろ」と言ってくる、残りの人は憧れる、くらいの微妙なライン。現実にありそう・なさそうのラインを探りたいんです。

――そのラインを探るために何かしていることはありますか?

Twitterでみんなが何をつぶやいているかを見るのがすごく好きなんです。暇があると、例えば「彼氏 好きすぎる」とかで検索して、“彼氏好きすぎる人”のタイムラインを見ているんですよ(笑)。

ゴールデンウィークが終わった後だと、ワードを「彼氏 さみしい」とかにして、遠距離中のカップルたちが何をツイートしているかを見に行ったり。書いている人のタイムラインを見て、プロフィールを見て、この人はどこに住んでいて普段彼氏のことをどれくらい書いているかを知るのが趣味なので(笑)。そういうことが反映されているかもしれないです。発言小町であれYahoo!知恵袋であれ、たくさん見ているとリアルな悩みとみんなが回答しそうなパターンがだんだんわかるようになってきますよね。ネットのおかげで人の気持ちが可視化できるようになってすごく楽しいですね。

夏生さえりさん

――いまは、多くの人がネットでは共感を求めていますもんね。

そうですよね。私は横並びの関係を作っていきたいとずっと思っているんです。ネットで活躍されてる方の中には、「私についてきて」「私の意見はこう」と、強い感じの方が多いのですが、私はそうはなれないなと学生の頃から思っていたんです。できるだけみんな横並びの関係で、なにかを強く言ったりせず、共感をベースにして手を繋ぐような感覚で文章を書いています。

――なるほど。その結果、15万人が手を繋げたというのはすごいですね。

時代もよかったんだと思います。始めたのがちょうどインスタが登場したくらいの時期で、リア充でもインターネットで叩かれない時代になっているところだったんです。私の文章は、昔からのインターネット住民に好かれるというよりはインスタ層、平和を愛する層と仲良くできていて。そういう人たちがInstagramをきっかけにさらにネットに流れてきた時期だったので、いいタイミングだったと思います。最近は、インターネットで必ずしも強い物言いは必要ないんじゃないかと思っていますね。これからはどうなっていくんでしょうね。

――次がどうなるかによってさえりさんの描く物語も変わっていきそうですね。最後に、これからやってみたいことを教えてください。

いまは“妄想”と言われるものを書くことが多いんですけど、ストーリーを作ることが好きなので、お話作りのような方向にいきたいと思っています。小説とかも一種の妄想だと思うんですよね。いまは身近なものの妄想ですけど、恋愛に限らずもう少し幅を広げていきたいと思っています。その他、脚本や何かの原作など、お話を作る人として届けられる人たちを増やしていきたいと思っています。

(インタビュー・文:岡崎咲子)

夏生さえり(なつお・さえり)

山口県生まれ。フリーライター。大学卒業後、出版社に入社。その後はWeb編集者として勤務し、2016年4月に独立。Twitterの恋愛妄想ツイートが話題となり、フォロワー数は合計15万人を突破(月間閲覧数1500万回以上)。難しいことをやわらかくすること、人の心の動きを描きだすこと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。著書に『今日は、自分を甘やかす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。共著に『今年の春は、とびきり素敵な春にするってさっき決めた』(PHP研究所)。

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