ドイツが独自の「EU軍」を作り始めた チェコやルーマニアなどの小国と

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<過去の戦争の反省か軍備増強はタブーだったはずのドイツが、ルーマニアやチェコやオランダなどドイツの「傘」が要る国と部隊統合をし始めた。目標はヨーロッパ統合軍だ>

「EU軍」の構想は、数年ごとに浮上しては論争を巻き起こす。それは夢の計画であると同時に厄介な難題でもある。ブリュッセルを中心としたEU(欧州連合)内の欧州統合推進派は、ヨーロッパの世界的地位を向上させるためには統合された防衛力が必要だと考えている。一方、ロンドンなど他の地域には、EU軍がいずれNATO(北大西洋条約機構)の対抗勢力になるのを警戒する声もある。

だが2017年に入り、ドイツとチェコ、ルーマニアが、実質的な「EU軍」の設立に向けた大きな動きを進めている。メディアは大きく取り上げなかったが、3カ国共同で兵力統合を発表する記者会見も行っている。この方法なら、EU軍創設について回る果てしない論争や官僚主義を回避できる。

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と言っても、ルーマニア軍が完全にドイツ連邦軍に統合されるわけではなく、チェコ軍がドイツ軍の一部隊に格下げになるわけでもない。今後数カ月のうちに両国は、それぞれ1個旅団分の兵力をドイツ軍に統合させる。ルーマニアの第81機械化旅団がドイツ連邦軍の即応師団に加わり、チェコの第4緊急展開旅団がドイツ軍の第10機甲師団の一部となる。第4緊急展開旅団はアフガニスタンやコソボへの派遣経験があり、チェコ軍の中でも先鋒を務める精鋭として知られている。

軍事力統合へ大きな一歩

オランダ軍は、すでに1個旅団がドイツ連邦軍の即応師団に、もう1個旅団が第1機甲師団に統合されている。ミュンヘン連邦軍大学教授で国際政治学が専門のカルロ・マサラは、たとえヨーロッパの他の国々が時期尚早と考えているとしても、「ドイツ政府はヨーロッパの軍事力統合に向けて進もうとしている」と言う。

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欧州委員会委員長のジャン=クロード・ユンケルは、EU軍構想を繰り返し提言しているが、これに対する反応は常に、冷笑か気まずい沈黙かのどちらかだった。EU軍に断固として反対のイギリスがEU離脱を決めた後も、その雰囲気は変わっていない。

EU軍がどのような形態を取るのか、統合の結果として各国軍がどのような能力を放棄することになるのかについては、EUに残る加盟国の間でも、ほとんど議論が行われていない。統合軍に向けた動きは当然、鈍い。

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EUは2017年3月に合同軍司令部を立ち上げたが、その担当任務はソマリア、マリ、中央アフリカ共和国での軍事訓練に限られており、人員もわずか30名。ほかにも、EU内で多国籍軍が構想されたケースはある。バルト3国と北欧諸国、オランダで結成する緊急対応部隊の北欧戦闘軍(人員2400名)や、バルト3国、スウェーデン、フィンランドなどが加わり「ミニNATO」とも呼ばれるイギリスの統合遠征軍が挙げられる。しかし、このような作戦ベースの連合軍は、具体的な軍事力展開の機会がなければ、存在しないも同然だ。

そこでドイツは、独自の構想を推し進めている。すなわち、ドイツ連邦軍主導により、欧州各国軍の部隊を結ぶネットワークの創設だ。ポーランドのシンクタンク、東欧研究センターに所属する北ヨーロッパ安全保障アナリスト、ユスティナ・ゴトコウスカは、「この計画は、ドイツ連邦軍の弱点を補うものとして構想された」と指摘する。「ドイツは、NATO内での政治的・軍事的影響力を強めるために、(中略)連邦軍における陸上部隊の戦力不足を補う必要があるとの認識に達した」という。

ドイツにとって、EU域内の中小国から支援を仰ぐ取り組みは、手っ取り早い軍事力強化の手段としては最良のものだろう。さらに言えば、ドイツ主導による各国軍部隊の統合は、集団安全保障について真剣に取り組むつもりがあるのなら、ヨーロッパにとって最も現実的な選択肢となる可能性がある。ミュンヘン連邦軍大学のマサラも、この構想について、「ヨーロッパの集団安全保障が完全な失敗に終わることを防ぐ試みだ」との見方を示している。

陸軍ヘリはポンコツばかり

実はドイツ連邦軍の軍備不足は深刻だ。東西ドイツ統一前の1989年、西ドイツ政府(当時)の国防費はGDP(国内総生産)比2.7%だったが、2000年になるとGDP比1.4%まで低下し、長年その状態が続いた。2013年から2016年までの国防費はGDP比1.2%止まりで、NATOが目標値とする2%には遠く及ばない。ドイツ連邦軍総監は、2014年に連邦議会に提出した報告書で悲惨な現状を綴った。なんと海軍が保有するヘリコプターのほとんどは使いものにならず、陸軍も64機のヘリコプターのうち18機しか動かなかった。冷戦時代に37万人を擁した兵力も、昨年夏の時点で17万6015人まで減った。

その後はやや持ち直し、常勤の兵士数が17万8000人以上になった。独政府は昨年の防衛予算を前年比で4.2%増加させ、今年はさらに8%増となる見通しだ。それでもドイツの軍事力はフランスやイギリスに追いつかない。しかもドイツで防衛費を増やすとなれば、軍事大国となった20世紀に2度戦争を仕掛けて敗れた反省から、国民の間で大論争になるのは必須だ。欧州の小国から軍事大国のアメリカまで、NATO加盟国はドイツが世界レベルでもっと大きな軍事的役割を果たすよう促している。だがシグマール・ガブリエル独外相は、ドイツがGDP比2%というNATOが掲げる目標値に到達するという発想自体「まったく現実的でない」と一蹴した。



まだドイツには、同盟国が期待するほど軍事力を拡大する政治的な意思がないのかもしれない。それでもドイツは2013年から、ドイツ連邦軍と小国の部隊統合に取り組んできた。ドイツの狙いは、連邦軍の軍備などを供与する見返りに、ドイツも相手国の部隊を利用できるようにすること。小国である相手国にとっても、ドイツの軍事力拡大という政治的に微妙な問題を回避しつつ、ドイツが欧州の安全保障により深く関与する道筋をつけられるメリットがある。

「このイニシアチブは、欧州独自の軍事力を確立する試金石になる」とマサラは指摘する。「イギリスとフランスには、欧州の安全保障を主導する余力がない」からだ。イギリスはEU離脱で加盟国との間に軋轢を生んだし、フランスも軍事大国とはいえ、NATO域内の多国間連携にはいつも及び腰だ。「だから残るはドイツだ」とマサラは言う。

運用面でも、兵士が常時任務にあたる部隊の方が、臨時的に寄せ集めた多国籍部隊より使い勝手がいい。さらに相手国にとって決定的に重要なのは、部隊統合で自国の軍事力を増強できること。しかも万一ドイツがそうした部隊の実戦配備を決めても、相手国の合意がなければ実行できないことになっている。

ドイツは1945年以降、独自の国外派兵に異常なほど慎重で、連邦軍のNATO域外派兵は長年タブーだった。ドイツの相手国は、このイニシアチブを突破口にしてドイツが欧州の安全保障に一層の責任を果たすよう望んでいる。今のところ本格的なEU軍にはほど遠いが、今後は規模が拡大しそうだ。

潰れかけた戦車部隊を救う

ドイツと統合部隊を結成した諸小国は、その効果や恩恵をしきりに宣伝している。ルーマニアやチェコは、自国の軍隊をドイツ軍と同水準まで底上げすることができる。オランダは、潰れかけていた戦車部隊の立て直しにつながった。(オランダ政府は財政難のため2011年に戦車をすべて売却した。だが現在、ドイツの第1装甲師団と統合してドイツ西部オルデンブルグに駐留するオランダ軍の第43機械化旅団は、今後オランダ軍部隊として派兵される際にはドイツ軍の戦車を借りられる)。

オランダの第43機械化旅団の指揮官アンソニー・リューベリング大佐によれば、部隊統合でほとんど問題は生じなかった。「ドイツ連邦軍は総勢18万人に上る兵力を擁するが、だからといって我々を弱者のように扱わない」という。彼は今後益々多くの国がドイツ軍との部隊統合に舵を切ると見込んでいる。

ドイツ連邦軍にも意中の候補国がいくつかあると、ドイツの候補国リストを閲覧したことがあるノルウェー防衛研究所のロビン・アラーズ准教授は指摘する。マサラによれば、ドイツが次に部隊統合する最有力候補に挙がりそうなのは、すでにドイツ製の武器を大量に購入している北欧諸国だ。



今のところ、ドイツの統合軍構想は地味で限定的なイメージが功を奏し、オランダやルーマニアの軍がドイツ師団と統合しても、欧州内で反対する声はほとんど聞かれない。今後参加国が増えれば政治的な反動に見舞われる可能性はあるが、見通しははっきりしない。

政治以外でこのイニシアチブの真の価値が試されるのは、統合部隊が実戦で機能するかどうかだ。1番やっかいな問題は、統合部隊が意思疎通に使う共通言語を何にするかということ。兵士たちは互いの国の言語を習得すべきなのか。小国の兵士がドイツ語で話すべきなのか。愛国心もあり、意外と難しい問題だ。間を取って、英語が共通語になりそうな部隊もあるという。。

(翻訳:ガリレオ/河原里香)

From Foreign Policy Magazine

エリザベス・ブラウ

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