【プレミアムフライデー連載】モノセレクター・ハイロックさんに聞く、「映画とビールな金曜日。」

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【プレミアムフライデー連載】モノセレクター・ハイロックさんに聞く、「映画とビールな金曜日。」

2017年2月末から始まった「プレミアムフライデー」。みなさんはどんな過ごし方をしただろうか。街に昼飲みへ繰り出した人、土日とあわせて小旅行を楽しんだ人……etc. と満喫した人もいれば、まだ普段の金曜日と変わらないという人も多いのでは。でも、せっかくの新制度、利用しない手はない!

この連載では、自宅でビール片手に過ごす「プレミアムフライデー」のお供にピッタリの映画や音楽、本、コミックを紹介。カルチャーに精通したあの人、遊び上手なあの人に、とっておきを聞いてみた。

今回「映画とビールな金曜日」を提案してくれるのは、Webメディア「HIVISION」で、エッジー&フレンドリーな“モノ”“コト”を発信しているモノセレクター・ハイロックさん。ハイロックさんのカルチャーの原点を作ったとも言える映画の話を、まずは1本目のビールのおつまみに。

同じ作品を何度でも。散りばめられた遊び心を味わう

――普段はどのように映画を観ているんですか?

僕は、映画を観る特定の時間や場所はつくりません。テレビでもiPadでも、ノートパソコンでも観るし、約2時間じっくり観るのはもちろん、合間の時間にちょこちょこ観たりもします。常に映画に触れられる準備を整えていて、海外ドラマなら1日5エピソードくらいは観ちゃいますね。

あと、同じ作品を何回も観ます。まずは純粋に楽しんで。それから2回目以降は、劇中に出てきた気になるフードやガジェットなどをメモしたり、iPadで調べたりしながら、映画の深みを探っていくというような。

  

例えば『ブレイキング・バッド』に、おもしろいアイテムが出てきたんです。麻薬の取引をするシーンで、主人公のウォルター・ホワイトがアヒルのようなものからビニールを出して札束を入れていて。何だろうと思って調べたら、なんと、おむつを捨てるディスペンサー。たしかにウォルターには赤ちゃんがいるので小道具として合っている。ただ劇中で説明がないし、設定を知らなければ流してしまう。「アヒル、ビニール袋」しかヒントがないから、答えを見つけるのに2週間かかりましたよ。

――観る映画をどうやって選んでいますか?

映画そのものの内容だけでなく、監督や脚本家の関係性、彼らが前後でどんな作品を作っているか、作品の時代背景などを調べていくのがすごく好きなんですよ。作品の設定や、ちょっとしたシーンや終わり方などに、そういうところが現れていたりするので。

例えば、『ブレイキング・バッド』が最高に面白かったと思ったら、制作総指揮のヴィンス・ギリガンの作品をたどっていって。DVDが出ていない『Xファイル』番外編に行き着いてVHSをオークションで探して観るっていう(笑)。

生まれて初めてクリエイティブな意味で衝撃を受けたのは『AKIRA』。10代にハマっていたウルトラマンにはも今でも感銘を受けているとか。

生まれて初めてクリエイティブな意味で衝撃を受けたのは『AKIRA』。10代にハマっていたウルトラマンのクリエイティブには今でも感銘を受けているとか。  

プレミアムフライデーにじっくり観たい。ハイロックさんオススメ4作品

――今回のセレクションもその視点を活かして?

ええ。まずは、僕が文句なしに一番好きな映画。特に何回も観ている作品を紹介します。

――最初の作品は、TSUTAYAの人気企画「NOTジャケ借」風にご紹介いただけますか? 読者のみなさんに予想を楽しんでいただきたいので。

そうですね……。言うなれば、

「NOTジャケ借」

でしょうか。答えは分かる人には分かりますね。

――答えは……『トゥルー・ロマンス』なんですね。

「獰猛な愛」というのは放映当時のキャッチコピーにもある言葉なんですけど、すごく秀逸で。純愛って、度が過ぎると、その人を守るために狂気にも化すというか、獰猛なんですよね。肉体の絡み合いとかも含めて。それをすごく上手に言い当てている。

――脚本がクエンティン・タランティーノですよね。ハイロックさんはタランティーノ作品好きと伺いましたが、選ばれたのが監督作品でないのは意外でした。

タランティーノ作品は、構造や時系列を入れ替える技法や撮り方が斬新だし、僕の好きなものがたくさん入っているんです。アメリカンカルチャーやポップカルチャー、バイオレンス、ピストル、ジャンクフードとか。音楽のカルチャーもそうだし。

ただ、『トゥルー・ロマンス』は彼が監督をやっていないところが、逆に良いと思っていて。タランティーノ風味がありながら、トニー・スコットの味付けがされているのが絶妙なんです。

タランティーノの痛くて残酷なハチャメチャなバイオレンスも、トニー・スコットの味付けで幻想的に仕上がっている。ラストの銃撃シーンでソファの羽毛が舞い散って、夢の世界で乱射しているような空気感になっていたり、木琴を使ったテーマ曲「You're So Cool」をBGMに、デトロイトの寒い景色を映しながらゆっくり時間が流れていく描写があったり……。

で、一番印象に残っているのが、デニス・ホッパーと、クリストファー・ウォーケンがサシで会話をするシーン。そこを観るだけでも価値があると思います。

――次は『007』番外編から2本。「カジノ・ロワイヤル」(1967年)「ネバーセイ・ネバーアゲイン」(1983年)ですね。

僕、『007』シリーズが大好きで。ジェームズ・ボンドは、あこがれの男性像なんです。生き方やファッション、女性のエスコートの仕方とか。

『007』は60年も歴史があるんですけど、役者も監督も制作チーフが毎回違うから、味付けが変わるんですよ。『007』の定義は、イアン・フレミング原作のスパイ映画であるっていうことと、イオン・プロダクションが撮っているということのふたつ。で、シリーズ24作目の他に番外編が3つある。普通「カジノ・ロワイヤル」「ネバーセイ・ネバーアゲイン」の2本が挙げられるんですが、個人的にもう1本加えたいのがロンドンオリンピックの開会式。演出を映画監督のダニー・ボイルがやっていて、『007』が短編で流れるんです。ジェームズ・ボンドがバッキンガム宮殿にエリザベス女王を迎えに行って、ヘリコプターに乗せてスタジアムまでエスコートするっていう。

僕は、この3本こそジェームズ・ボンドファンだったら、押さえておかなきゃいけない作品だと思っているんです。

『007』シリーズは訴訟がすごく多くて。原作問題と、制作問題と、キャラクターの権利問題。「カジノ・ロワイヤル」は特にすごい。原作の権利を制作のイオン・プロダクションが買えなくて、てんやわんやで監督が5人になっちゃったりして。もうハチャメチャで、もう『007』じゃないと思って観た方が面白いかもしれないくらい。だけど、映画として広く観れば評価できる作品なんです。美術セットがいかにも60年代っぽくて、サイケデリックでかっこいい。『オースティン・パワーズ』の元ネタとも言われていますね。

初代ボンドのショーン・コネリーが10年ぶりにボンドを演じて、そして最後になった作品「ネバーセイ・ネバーアゲイン」が番外編なのは、やっぱり原作の訴訟問題の関係。このタイトルは、ショーンの奥さんが彼に「ジェームズ・ボンドをもうやらないなんて言わないで」って言ったセリフから取っているんです。さらに劇中のラストシーンにも掛かっていて。「次の任務もよろしく」って言う諜報部員に対してボンドが「ネバーアゲイン(もうやらない)」って。ウインクでね。

――最後は和製パニックムービー『新幹線大爆破』

1975年公開当時、映画の世界的トレンドがパニックムービーだったんです。で、日本でも作ろうとなった。今でこそ日本のモチーフにはアニメや秋葉原などいろんなものがありますが、高度成長期の当時は新幹線くらいしかなかったから、モチーフが新幹線になっています。

とにかくプロットが完璧。新幹線を80km以下に落としたら爆発するという……そう、『スピード』のプロットと一緒。『スピード』はこの作品を参考にしているんです。日本では興行成績があまり良くなかったけど、海外ではすごくウケた。

――高倉健さんは犯人役なんですね。

高倉さんは、脚本を読んだ時に感動したらしくて。こんな面白い脚本だったら犯人役でいいからって。

その犯人グループは、高度成長期の負け組になってしまった、町工場のおじさん達。国も銀行もお金を貸してくれない。で、恨み果たすべく、新幹線を乗っ取って国に金を要求する。車内でのハラハラ感もあるし、車外での犯人グループと警察との攻防も見応えがあります。

新幹線の運転手の千葉真一さん、犯人の高倉健さん、市電本部長の宇津井健さん、三人の渋い演技が光るんです。

映画は“究極のアート表現”

――本当に幅広いセレクションですね。ハイロックさんの審美眼は映画でも発揮されていますが、好きな映画の傾向はあるのでしょうか。

モノ選びもそうですけど、食わず嫌いはしないようにしているんです。邦画、洋画、ドラマは海外・日本、アイドルのドキュメンタリーも。

カルチャー好きやクリエイティブ好きって、やっぱり映画が好きじゃないですか。世の中にはいろいろなメディア表現や芸術がありますが、僕は映画を“究極のアート表現”だと思っています。美術、音楽、役者さんの演技、ストーリーの面白さ――それらが複合的に相まって、面白い映画が出来上がる。

僕には、こういう「芸術は作った人が偉い」という考えが根底にあるので、一般的に駄作と言われているものでも、意外と評価しちゃうんです。自分の好みや気分、時代の流れがあるから、面白い作品というのは自分の中で持っていますけれどね。


映画を観るだけでなく、調べて、コレクションして、味わい尽くすハイロックさん。時間がたっぷりある「プレミアムフライデー」だからこそ、そんな映画探求の冒険に存分に出かけてみたいものだ。

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(撮影:杉野正和)

ハイロック

群馬県出身。アパレルブランド「A BATHING APE®」のグラフィックデザインを経て2011年独立。表現の場を選ばないマルチクリエイターとしてのキャリアをスタート。デザインワークを生業とする一方で、雑誌『MONOQLO』やファッション誌『GRIND』での連載をはじめ、メディア各方面にてグッドデザインアイテム、最新のガジェットを紹介。著書に『I LOVE FND ボクがコレを選ぶ理由(マガジンハウス)』。J-WAVE「ALL GOOD FRIDAY(毎週金曜11:30 - 16:00)」にて毎週生出演で東京の最新情報を発信。

HIVISION Created by hirock |ハイビジョン
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