アイルランドはケルトだけじゃない! 自然や歴史の知られざる魅力満載のトークイベント

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2015年4月12日(日) 湘南 蔦屋書店にて、アイルランド伝承文学研究家の渡辺洋子氏によるトークイベントが開催された。アイルランドはユーラシア大陸の西に位置する島国で、アイリッシュ・ウイスキーやギネス・ビールの発祥の地として、またケルト文化や神話、伝説、昔話といった伝承文学が残る国として知られている。

渡辺氏は朝日カルチャーセンターなどで、アイルランドの伝承文学や独自の言葉であるアイルランド語(ゲール語)の講座を担当している。これまで共著にて『こどもに語るアイルランドの昔話』(こぐま社)、『アイルランド 民話の旅』(三弥井書店)などを発表。昨年10月24日には、『アイルランド 自然・歴史・物語の旅』(三弥井書店)を上梓した。

『アイルランド 自然・歴史・物語の旅』(三弥井書店)

『アイルランド―自然・歴史・物語の旅』は、アイルランドに語り継がれる物語や歴史上の出来事を、地理的な特徴とともに紐解く一冊だ。本トークイベントでは、渡辺氏はスライドで風景写真を見せ、風土や言語の知識を交えながら、本書の概要を紹介した。また、共演した語り部の高畑吉男氏が、アイリッシュハープを奏でながら英雄物語を披露した。


ケルトだけではないアイルランド

渡辺洋子氏

初めに渡辺氏は、アイルランドの風土の魅力とこの地に住んだ各時代の民族の歴史について言及し、「決してケルトだけの国ではないことを知ってほしい」と語った。

「アイルランドは北海道よりも少し大きな、小さな島国です。緯度は樺太やサハリンとほぼ同じですが、沿岸を流れるメキシコ湾暖流と、大西洋から四季を通して吹き寄せる南西風の影響で、一年を通して比較的穏やかな気候に恵まれています。緑色が国を象徴する色であるように緑豊かで、8000年以上前から人が住んできた、豊かな文化が残るすばらしい国です。アイルランドと言うと、『ああ、ケルトですね』と、日本人の人はすぐおっしゃいますが、ケルト人がやってきたのは紀元前500年頃です。ですからケルトというのは、この国では比較的新しい文化なのです。」

アイルランドでは東西南北で変化に富む風景が見られるが、その背景として渡辺氏は「氷河期の影響を少なくとも2回受けた痕跡が各地に見られる」と解説。また、ヨーロッパでは珍しくローマ帝国に支配されなかったため、他の国では失われてしまった数千年前の遺跡から現代にいたるまでのさまざまな建造物や廃墟が、数多く残っているという。

自然のなかの博物館「ボイン川流域」

「タラの丘」の中央にそびえる花崗岩の円柱「即位の石(Lia Fail)」は、古代から王が即位の儀式を行ったと言われている。また、男根の形をしているので、豊穣のシンボルでもあった。

「アイルランドの風景を語るときは物語を知り、物語を知るには風景を知らなければならない」と渡辺氏が言うように、アイルランドの伝承文学は、風土と密接に関わっているという。またアイルランドには、土地にまつわる歴史や伝説を研究する「ディンシェンハス(dindshenchas)』という学問があり、詩人や学者らの努力によって今世まで受け継がれてきたそうだ。

渡辺氏はアイルランドの歴史や物語にまつわる地を訪ね歩いてきたが、最も肥沃な地域で、数多くの歴史や物語が残っているのが、ボイン川流域だという。ボイン川は首都ダブリンのあるアイルランド東部を流れてアイリッシュ海に注ぐ、流域約120kmの川である。渡辺氏はこの領域を「まるで自然のなかの博物館」と呼び、ケルトの聖地と言われる「タラの丘」などを取り上げて解説した。

「『タラの丘』は360度景色を見渡せる、良い立地条件にあります。そのため、何千年も前から祭儀の場所として使われ、常に争いの的になってきた場所です。ケルトの人たちの、一番力の強い王が住んでいたと言われています。」

なお、「タラの丘」は今もアイルランド人に慈しまれている場所で、映画『風とともに去りぬ』のアイルランド系米国人の主人公、スカーレット・オハラが住む土地「タラ」は、この地名に由来する。 

灰色の地に咲く花々「バレン高原」

次に渡辺氏の案内は、肥沃なボイン流域とは対照的な、アイルランドの西部に移った。会場には石灰石できた、見渡す限り灰色の石の台地である、バレン高原の写真が映された。

「『バレン』はアイルランド語で「石の多い場所」という意味になります。しかし一見して何もないように見えて、ここは植物の宝庫なのです。この地は地下が侵食されて地下水が溜まり、そこに大西洋の強い日差しが当たることで、まるで天然の床暖房のようになっています。そのため石の間から、小さな花が一年中たくさん咲きます。」

そのバレンには、古い時代の遺跡があちこちに残っており、紀元前3800年頃のものとされる石の柱に支えられたテーブル型の墓や、古い墳墓が数多く発見されているという。

バレン高原から少し北にある「モハーの断崖」は、アイルランドで最も有名な観光地の一つ。黒砂岩という古い岩層が露出した珍しい地形が、神秘的な景観を描いている。

ボイン川流域に伝わる英雄フィンのお話

高畑吉男氏はアイルランドの語り部団体「ストーリーテラーズ・オブ・アイルランド」の正会員で、全国各地でお話会を開催している。

続いてアイルランドで語りを学んだ高畑吉男氏が、アイリッシュハープの演奏を挟みながら、ボイン川流域の民間伝承を2つ披露した。

「アイルランドには伝承のお話がたくさんあります。写本に残っているものと、口で伝えられてきたものがあります。有名なのが、クーハランとフィンの2人のお話ですクーハランはケルトのなかのスーパーヒーローで、何も欠点がなくて強くて優しくて、若くして死んでしまいます。一方フィンは、年を取るといじわるで嫉妬深くなって、若いカップルを嫉妬に狂って追い回すような人です。不思議なことにアイルランド人は、フィンの方が好きです。」

アイルランド人が愛する英雄フィンが若い頃、知恵の鮭を食べて全知全能の力を手に入れたお話や、妖精の首を切り落として退治したお話が、リズムよく語られた。いずれのお話も、渡辺氏の著書『アイルランド―自然・歴史・物語の旅』に収録されている。

(文:山岸早瀬)

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